ヒロインとの邂逅・ビー太くんの背負い投げ〈ヒドイ落書き付〉
ビー太くんの制止と諌める言葉を背に受けながらも、私はリード君の家に向かった。
だって、私の知っているこの世界の主人公は、善人で、明るくて、真っ直ぐ悩んで立ち上がる、まさに主人公と呼べる人物だったからだ。
プレイしてきたゲームだから、解る。彼を主人公に選択して遊んだクリア済セーブデータだってビー太くんの中にはあるんだ。
リード君がどんな子か、私は良く知っている。ビー太くんだって知っている訳で、だからきっと解ってくれる筈だと私は思った。
「ビー太くんは、私と遊んでくれているんだよね?」
「……ああ」
「私の本気の恋を探すのが、私とビー太くんのゲームの目的だよね?」
「そうだが、しかし……!」
「……恋愛ってさ、たぶん、どんな状況で起きるか、分からないものだと思うんだ。だから、イレギュラーな存在が入り込んでも、怯んじゃ駄目なんじゃないかな。何より、リード君の事は、私達二人とも良く知ってるじゃない? この世界にいること、何にも不思議じゃないよ」
「……ゲームマスターの僕が知らない事態が起きているんだぞ。もしもご主人を守れなかったりしたら、僕はーー!」
「ーーだいじょうぶ、だよ、ビー太くん」
だいじょーぶ。
私は俯くビー太くんの頬っぺたを軽くつねる。こんなビー太くんを見るのは初めてだけど、私の心配をしてくれているんだという事だけは、直ぐに解った。
「……なあ、お二人さん。あんたらって、もしかしてやっぱりそういう関係か?」
家の扉を背にして、私達を見るリード君がそうからかうように言ってくると。
「違う!!」
俯いていたビー太くんが、リード君をキッと見て、短く大きな声でしっかり否定をした。
ーーちょっと傷付く私。
それでも、私はリード君へどうにか笑顔を向けて言う。
「ーー私達はさ、相棒なんだ」
「……へぇ? ま、上がりなよ。甘酸っぱい時期のお二人さん」
リード君が、ログハウスみたいな自宅の扉を開けて、私達が家の中に入るのを待ってくれている。
ーー甘酸っぱい関係にさえ、ビー太くんはなってくれないんだけどなぁ……。
そう思いながら、私はリード君の家の玄関に踏み込んだ。ビー太くんも気乗りしない顔をしながら、私に続いてくれている。
リード君も家の中に入り、扉を閉めると、家の奥から「おかえりなさいませ」という、メイプルシロップみたいに甘やかな女の子の声が聞こえてきた。
リード君は、大きな声でその女の子の声に答える。
「ただいま! 畑跡地からお客さん2名連れてきたぜ!」
私とビー太くんの背中を両手で押して、リード君は自宅の部屋の居間に向かう。
見知った室内の光景に、私は胸を踊らせた。
ーーそして。
「お客様ですか? ただいまお茶の準備をしますね!」
ふわふわの金髪をツインテールに結い、キラキラの青色の瞳を瞬かせ、ピンク色の可愛らしい洋服を揺らし、背中に小さな羽を生やした、まさしく天使みたいな女の子が、私達に挨拶をしに出てきてくれた。
「か、か、か、可愛いいィ~~!」
彼女は、この世界で、私が大好きになった女の子キャラだ! ヒロイン候補の一人!!
「フランちゃん! フランソワーズ・リラ・フラワーちゃんんん~~!!」
そう興奮しながらいい放ち、私はフランちゃんの手をとってブンブンと上下に振ってしまった。
私のあまりの剣幕に、さしものリード君も、可憐なフランちゃんも固まった。
そして、私はハッと気付く。
あ、これって、やっちゃ駄目な事だったんじゃーー?!
「ーーだから、そういう言動をーー」
あ。案の定だ、まずい。また、私やっちゃった。
「するなと言っただろう、ご主人ッ!!」
次の瞬間、私はビー太くんの細腕で、背負い投げをされてしまったのだった。
ーーウン、ワカッテタヨ。
投げられ、立ち直ってから、私はその場にいた全員に平謝りをしたのだった。




