主人公クン(陽キャ)とビー太くん(クール属性)
「……! あ、あはは、やっぱり変な名前だよねぇ、私。えっと、変ついでに……私の仲間も紹介するね?」
私は、リード君の前に、私の大事な『自分のゲーム機の化身』である、ビー太くんを連れて来ようとしてーー、ビー太くんから軽くチョップをお見舞いされた。
え。な、なんで?
ビー太くんは何も言わず、リード君の前まで歩いていった。
見た目の年の頃が近いのに、明らかにビー太くんよりリード君の方がぐんと背が高いのが分かった。
「……初めて会うな。助力に感謝する。僕はここにいる『さたんぬ』の従者で相棒で、片割れみたいなモノだ。僕の名前はご主人がつけた。ご主人は僕の名付け親でもあるんだ」
ビー太くんが、それはもう珍しく饒舌だった。初めて、私以外の誰かに長々と自己紹介をしている。
けれども、なんだろう、雰囲気があまり宜しくない。ビー太くんが、ちょっと雲行きが怪しいツアーコンダクターと化している。
「り、リード君! こ、この子の言ったこと全部本当だよ!! それから、この子の名前は『ビー太』くん、です!」
「び、ビー太?! ……さたんぬ、お前ネーミングセンスどうなってるんだよ!!」
はは、アハハハ!!
リード君は邪気なく笑う。楽しそうに、明るく。
ーーしかし、なんでなのか。
ビー太くんの方はこころなし怖い面持ちをして、リード君のそんな様子を冷たく見ているのだった。
ど、どうした、ビー太くん?!
心配になってビー太くんの側に寄り、私はビー太くんの顔を覗き込む。
すると、何故か、ビー太くんに私の手はきつく握られた。
「邪魔をしたな、リード・マスターキー。僕らは行く。旅の途中なんだ」
「……え、ええっ?!」
私は驚く。だって、私の恋愛がどう紡がれるか見届けるのがビー太くんの役目で目標だった筈なのに。
ビー太くんが自ら用意した、二番目の転移先がこの世界なのに。
「いやいや、ちょっと待てよ! 折角の縁なんだぜ? 俺んちで旅の話とか聞かせてくれよ。少し離れてるけど、案内するし茶ぐらい出すから」
リード君はビー太くんの言い様に悪意は感じておらず、むしろただただビックリしてるみたいだった。
「ーーうん! 旅の話、したいな、お家にお邪魔させて貰っても、良いの?」
ーー正直に言おう。
私は、本当にリード君の家に行きたかった。だって、長年、私だって主人公目線で、リード君の家を見ていたのだから。
リード君の家は、女主人公としてプレイしていた、私の家でもあるのだから。
異世界にある我が家に、私は行ってみたいのだ。
「おう、来いよ、お二人さん。中にも人間がいるっちゃいるが、構わないで平気だ! じゃ、俺についてきてくれよな!」
リード君は、やっぱり主人公クンだ。グイグイ嫌味なく、人を引っ張っていける力の持ち主。
さあ、彼についていこうーー、そう思って、私が一歩を踏み出そうとした時。
ビー太くんが私に思い切り顔を寄せて囁いてきた。
「ーーやめておけ」
当初の予定とは違う。
リード・マスターキーの登場は僕が設定していたシナリオとかけ離れている。
「ご主人が、この世界の女主人公になる筈だったんだ、今から行こうとしているリード・マスターキーの家は、端からご主人の物である筈だった」
ーーリード・マスターキーの存在は、イレギュラーだ、この先、何が起こるのか僕にも判らないーー
警戒色を隠さずに、ビー太くんは私にそう現状の異質さを伝えてくれた……。
立ち止まってしまった私達の方を振り返る、リード君。
本来いるはずの無い、この世界での男性主人公の、彼は。
「何してるんだ? 早く来いって!」
ひどく明るく、カリスマ性に溢れて、私達を呼んでくるのだった……。




