表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

気ままに歩くこの道を

作者: 音無悠也

今日も太陽が照らすこの道をのんびりと仲間と旅する。


決して特別な家の出自でもなんでもない。

普通の街の普通の家の生まれ。

たまたま、この世界で授けられたスキルが特殊だった。

戦闘向きのスキルなら兵士に。

商売系なら商人に。

その人の生きる道の指標となるスキル。

もちろん、そのスキルも基本的には成人する時に授けられたものだけで一生を過ごす人の方が大半だ。

戦闘をしていると、スキルが増えることがあるらしいが、戦闘なんてほとんどの人が経験しないからね。


そんな私も戦闘系のスキルは授からなかった。

けれど、ちょっとばかし特殊なものを得た。

それは、様々な生き物と会話をすることができるスキル。

なんだかんだ、私の特徴を活かすようなスキルをくれているあたり、神様はよく見ているのかもしれない。

確かに、私自身には戦闘の才能はないかもしれない。

けれど、生き物を通してスキルの恩恵を受けられるこのスキルはある意味、破格のスキルかも…?

まぁ、私には戦闘する気なんて全くないのだけれど。

のんびりと旅がしたい。

そう決意した私は、準備もそこそこに町に来た商人の馬車に相乗りして街を離れる。


そして、至って普通の街の娘がなんの装備もスキルも持たずに街の外に出れば…そりゃ、野盗のカッコウの餌食となるわけだ。

しかし、なんの対策もしてないわけではない。


この旅を始めて出会ったのは、小さい黄色の鳥。

普通の人からすれば、気にすることなんてないただの黄色い鳥かもしれないが、彼は視覚共有などの感覚リンク系のスキルをいくつか持っていたのだ。

そのおかげで、今、目の前では野盗たちが森の動物たちに襲われて逃げていった。

戦えなくてもやりようはあるな。


しかし足がなくなってしまったので、街道に出て隣町を目指してゆく。

黄色い鳥のおかげで、迷わず次の街まで行けたし、危険なところは避けていけた。

次の街では、道中に拾った装備品やモンスターの素材などでそこそこにお財布が潤う。

ここはどうやら、温泉が名物らしい。

行くしかないよね!!

お財布も潤ったとこなので、ちょっと贅沢をして良い温泉に浸かった…。

ご飯もついてきたので、ホクホクで次の日を迎え、ガイドブックを買い本格的に旅に出る。

ここからが、私のスローライフ旅の始まりだ…!


と、意気込んだは良いものの。

徒歩では全然進めなかった…。

1日目と2日目は楽しく野宿しながら進めたが、3日目からはどうしようかと悩みのタネに。

そこで、出会ったのがこの目の前にいる大きな犬。

いや、私のスキルは魔狼と言ってくるが、どう見ても犬なのだ。

お腹を仰向けにして甘えてくるこの生物はあの恐ろしい狼とは思えない…。

しかし、この犬(狼)が私を背中に乗せてくれれば移動も快適になる。

せっかく、目の前でデロンデロンになっているので、お願いしてみる。


「私たち、旅をしているのだけれど、背中に乗せてくれないかな?」

「旅か!僕もこの森から出たいところだったし、良いよって言いたい所だけど…」

「何かあるの?」

「群れのリーダーがなんていうか…」


それなら話が早い、リーダーとお話ししよう。

なんせ私は、動物と心を通わせることができる、すぐに打ち解けるだろう。

それに、心を通わせた動物からスキルを借りたりできる彼女からすれば、基本的には怖いモノなしなのだ。

結局、狼さんのリーダーとも仲良くなって無事、足を手に入れた。


次の街では検問でこそ驚かれたが、中に入って仕舞えばいつもと変わらず観光名所を巡ったりできた。

ここでも、食料を買おうとしたのだが、運よくマジックバッグを買えたので荷物問題が解消されたのは、また別のお話。


そうして、また次の街への旅へと黄色い鳥とのんびりとした、旅をしていると、羊と出会う。

羊とはいうが、足は早いし頭突きは痛いし。

立派なモンスターではある。

しかし出会ったのは、傷ついてふらふらの子だった。

話を聞いてみると、どうやら、縄張りを別の動物に襲われて逃げてきたらしい。

彼女の足は泥だらけだった。

体の羊毛にも枝や汚れがたくさん。


ひとまず、その追い出されてしまった寝床に行くと大きな猫がいた。

いや、虎といった方が正しいかな?

私たちも別に隠れて向かったわけではないから、最高に警戒してる。


「お前たちも敵か!?」

「敵じゃないよ、あなたとお話に来たの」

「敵じゃない?なら何の用だ」


かくかくしかじか…と要件を話すと、案外冷静に話し合いに応じてくれた。

この虎さん(猫さん)も縄張りを追い出されてきたらしい。

今更ながら、私の旅仲間と羊と虎、よそから見たら、私が襲われているように見えかねないよね…。


「ひぃぃっ…!!」

「あ」

「グゥ?」

「ぴ?」

「めェ?」

「わふ!」


ほら言わんこっちゃない。

たまたま、近くにいた冒険者が見てしまったのだろう。

逃げる足音。

そりゃ、この動物(一応、魔獣)集団と少女がいたら逃げるよね…。


「ここにいると、今度、冒険者さんたちに襲われちゃうかもよ?ついてくる?」

「ついていった方がいいのだろうな…」

「私もこの際、ついていっちゃいます!」


羊と虎もどきも旅のお供に。

こうして、私は旅の仲間も増えて移動も楽チンで荷物の心配もないし、護衛もいる。

ある意味、最強?

次の街で多少どころではない騒ぎになってしまったのは言うまでも無い。

それでも私の観光旅は終わらない。


ある時は雪山に登ったり、ある時は地下深くまで洞窟を進んだり…。

各地で様々な出会いと別れをしながら、この世界を旅していく。

そしてそんな彼女の姿は、動物姫という二つ名がつくように。

色々な街を巡り、色々なトラブルに巻き込まれながらも彼女は、強く生きていく。


彼女は本として、各地の観光名所をまとめたものを売り出し、旅を辞めた後も有名人に。

けれど、本にまとめられないようなお話も沢山。


そして、各地を回る中で彼女は気に入った街で家を買って暮らすことに。

もちろん、旅の仲間と共に。

そして運命の人と出会い、結婚し母となっても旅の仲間といつまでも幸せに暮らしていくお話。


僕はそれを母様から沢山聞かせてもらう。

嘘のようなお話も、狼さんや鳥さんが本当だよと伝えてくれる。

きっと、このお話は友達に信じてもらえないだろうなっていう話まで。

今日は、僕のスキルがわかる日だ。

お母様のようなスキルがいいな!

心躍らせた彼が、そのまま、母親同様に飛び出して旅に出たのは、また別のお話。


またどこか、お時間ができた時にお話いたしましょう。

そろそろ、俺の手が疲れてしまったので今日はこの辺で筆を置きたいと思います。

いつまでも、書斎に引きこもっていると、妻に怒られてしまいます…。


そうして、彼女の子供へと受け継がれていく、その子の旅のお話。


彼の閉じた本の表紙には、母親が仲間として連れていた動物以外にも、様々な動物が。

その1匹1匹に沢山の物語が…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ