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貴族って、ほんっとに相容れない生き物だ②

「えっ、本当ですか!?」


 新人君が入ってこないかな~、なんて思っていた翌日に、まさか本当に来てくれるなんて。まるで私の願いを、女神様が叶えてくれたみたい。



「新人はディアナに任せる。研修の期間は1か月だ。その間にキチンと使えるように教育しとけよ?」

「わかりました!」


 ……んんっ? 新人研修?

 私が入所した時に、そんなものは無かった気がするんですけど。


「あぁ、言っておくが平民の貴様とは違って、相手は尊い血をお持ちの方だ。間違っても、つけあがった態度を取るんじゃないぞ」

「はい……」


 まぁいいわ。私が直々に教えられるなら、悪い環境に染まるのを防げるかもしれないし。


 相手がどんなに偉い貴族だろうが、研究所の先輩としてしっかり指導してやろうじゃないの。



「……別に。アンタに教わることは、なんも無いから」

「…………」


 新人君は白衣のポケットに手を突っ込み、椅子の背もたれに寄り掛かりながら私を見上げた。


 彼の名前はローグ。

 年は20歳で、私の5歳下だそうだ。

 アカデミーを卒業してすぐに、この研究所に入所することになったらしい。


 この国では珍しい銀髪の癖っ毛をしていて、顔はイケメン。切れ長の目はちょっと怖いけど、まつ毛は私なんかよりも長い。鼻は高いし、口も……挙げたらきりがないほど、全てのパーツが整っている。


 だけど生意気だ。どう考えても、完全に私のことを見下している。



「ふぅん。そういやアンタ、平民って聞いたけど。ここで働いてるなんて、意外と良い腕してるんだ?」


 ……なによコイツ、選民思想のエリートなの? めちゃくちゃ感じが悪いわね。


 ていうか、アンタって。せめて先輩って呼びなさいよ。



「まぁ……そこそこじゃないかしら」

「あっそ」


 こっ、こいつ!

 興味がないなら、最初っから聞くんじゃないわよ!



 そもそも、どうして彼のデスクはこんなに豪勢なの!?


 精美な装飾がされたアンティーク調の机に、革張りのふかふかチェア。これって調合に使う作業台ですよね? こんな仕事机なんて、所長室以外で見たこと無いわよ?



 チラ、と左隣にある私のデスクと比較する。

 使い古された木製の丸椅子に、前の使用者が調合で失敗したらしく、黒い焦げのついたボロッちい作業机。


 見比べれば見比べるほど、自分への扱いの酷さに、気分が落ち込みそうになってくる。



「あー。悪いけど、言葉遣いとか改める気はないから」

「ア、ソウデスカ……」

「で? 僕がやる仕事は魔法薬の調合? ――って、なにこれ」


 彼は私が手に持っている木箱の中を覗いて、ムッと眉をひそめた。


 中には、基本の調合セット(私チョイス)が入っている。魔法薬の素材となる、魔法植物の下処理を練習するためのものだ。


 入所したばかりの新人にやらせるには、丁度いい腕試しだと自分でも思う。私はパワハラ上司と違って、いきなり無茶な仕事を新人に任せたりはしないのだ。


 ――だけど彼はそれが不服だったみたい。



「あっ、ちょっとどこへ行くの!?」


 急に立ち上がった新人君は、ツカツカとどこかへ歩いて行ってしまう。慌てて私もあとを追いかけていく――と、そこはピペット課長のところだった。




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