会長、当たってます!
最近、真面目なやつを書きすぎてこういうふざけたものを書きたくなりました。読んでくださりありがとうございます。
これは言うべきなんだろうか?
いや、でも……会長だって一人の女の子なわけだし、こんなことを男の俺から言うのもなんか憚られるし……でっ、でも流石にこの状況は……
「―――聞いてる?真田くん」
「あっ、はいっ!!聞いてます!」
「そう?ならいいわ」
会長はそう言うと再び手に持っている書類に目を落とし、話し始めた。
その横顔は真剣そのもので、僕がこうして仕事に集中できていないのがとてもいたたまれない。
いや、でも……やっぱりこれは……
「真田くん。ほら、ここ」
むぎゅっ!
「んんっ!……」
ナニがとは言わない。
本当に何がとは言わないが、柔らかいものが腕に当たってる。当たちゃってる。
そして、自然と僕の視線も腕の方に下がっていく。
これは本当にしかたない。
生物の構造上本当にしかたないことなんだ。
いわば、不可抗力だな。
「―――だから、聞いてる?」
「これは不可抗力……これは不可抗りょ……はっ!き、聞いてます!」
別に腕に感じる感触を感じていたわけでは断じてないが、会長の話を聞いていたわけでもない。
要するに感じていました。すみません!
「はぁ。まったく。いい?真田くんを私は次の会長に推薦したいの。だからこうして私が今、会長の仕事をあなたに教えているの」
「……はい」
会長は一度僕から離れると、語りかけるように言う。
その顔はさっきから変わらず真剣そのものだ。
今は9月。もう少しで三年生の会長は生徒会を引退する。
だからこうして、一緒に仕事をできるのも後少しなわけで……
僕は(たぶん)事故とはいえ、会長にあんな感情を抱いていたことに罪悪感を感じてしまう。
シュンと凹んでしまった僕を見て、『フッ』と会長は少し表情を緩ませる。
「でも、そうよね。少し根を詰め過ぎたみたい。少し休憩しましょうか」
そう言うと、会長はコーヒーを淹れに立ち上がった。
カチャカチャとコーヒーの準備をしている会長の姿を見つめていると、怒られた事もあってか、無性に何もしていない今の状況に気まずさを覚えてしまう。
安心して会長には引退してもらいたい。
こうして僕に世話を焼いてくれる会長を見ていると本当にそう思う。
「……よしっ。集中!」
パンッ。と一度自分の頬を叩くと僕はさっきまで見ていた書類に再び目を向ける。
わからないこともまだ多いけど、自分なりにやれることをやろう。
そう思っていた時も僕にはありました。
「あら?まだ、頑張るの?」
「はい。会長が安心して引退できるように、がんばります」
「……はい。じゃあこれ」
「ありがとうございます。会ちょ―――」
むぎゅっ!
「んんっ!……」
うん、たぶんだよ。たぶんだけど会長は本当にただコーヒーを置いてくれただけなんだ。
そうなんだろうけど……
「あの………………………会長、当たってます」
僕は意を決して後ろにいる会長に言った。
こうして、僕のためにコーヒーを淹れてくれた会長には本当に申し訳ないけど、どれだけ優秀な人にだって気づかないことはある。
それに、もし気づかないまま社会に出たら、こうして僕みたいに被害に遭う人たちが出てしまうかもしれない。
いやっ、べ、別に被害とか思ってないけど、むしろ役得っていうか……そんなこと思ってないけど!
今後、会長に恥をかかせないためにもここは僕が一肌脱ぐしかない。
そんなことを思っていた僕だけど、一つの違和感を覚えた。
それは―――
「あ、あの会長?その……」
いつまでたっても会長が離れないのだ。
むしろだんだん後頭部に感じる感触が強くなっている気が………
「当ててるのよ」
「………は?」
混乱していた僕の頭にさらなる爆弾が投下される。
ん?会長は今、なんて言ったんだ?
「聞こえなかったのかしら?だから―――」
僕は恐る恐る、後ろを振り返る。
この事実を受け入れたくない自分と、なぜだか喜んでいる自分がいる。
会長の顔を見ると今まで見たことがないほど血走ったような目をしていて、なんか「ハーハー」言ってる。
「当ててんのよ!」
あーあ、僕の理想だった会長のイメージが崩れていく。
悲報。会長は痴女でした。
【完】
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