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ほのぼの幽閉



「み、ミアちゃんが国王軍に捕まった!? それ、ほんとなのクロエちゃん!?」

「はい、本当です。だから、こうしてお願いに上がったんです。ファーランド家からも何かできないか、と」

「当然だよ! ねっ、お父様!?」

「う、うむ……」

「お父様?」

「さすがに国王様が相手となると――」

「嘘でしょ!? 信じられない!? ミアちゃんは私やリベール女学院みんなの命の恩人で、ファーランド家を救ってくれた恩人でしょ!?」

「ユミリア、落ち着きなさい。最後まで私の話を聞いてくれ。さすがに国王様が相手となると、私たちファーランド家の立場は危うくなるどころか、おそらくは没落だ」

「それが何よ!? 恩人に恩返しすらできないような貴族なんて、こっちから願い下げ!」

「ふふふ、ユミリアはミア殿に出会って少し変わったな。前はそんなに自分の想いを言葉にするような子ではなかった。ミア殿に救われて良かったな」

「ミアちゃんが私を助けてくれたところは眠っていて見れなかったけど、後で魔導理論を構築した大量の紙を見たの。一人で、たった数時間で書いたとは思えない量よ。それを見て圧倒されたのと、ここまでして私を助けようとしてくれたんだって実感したの。私もミアちゃんみたいにカッコいい女の子になりたいって、そう思った」

「私もだ。感謝と礼をあそこまで清々しく断る姿勢。私も見習わなければな」

「お父様、私は全て覚悟しています」

「ああ。クロエ殿」

「はい」

「私たちファーランド家は貴族としての地位を捨て、ミア殿を助けると誓おう!」

「ありがとうございます!」



◇◇◇◇◇



「もうダメ、か? とうとう限界か!?」

「ああー、ダメだ! 天井の染みが何度数えても数が合わないんだよね……」

「は、はあ!?」


 あたしが幽閉されたのは王城の地下室で、そこは魔力やマナを一切遮断する特殊な場所だった。多分、拷問とかに使われている部屋なんだろう。ジメジメしていて壁も天井もカビだらけだった。


「いやほら、天井に染みがあるじゃん? 一回目数えた時は六二三七だったのね。次に数えたら六三〇一だったの。三回目は六二六七で――」

「お、お前は一体何を……!?」

「ああ? 暇すぎて、やることが他になかったんだよ。ずっと上見てたから咳き込んじゃって、首も痛いし、いい加減目も霞んできたし。で、そろそろダメだーってなったの」

「お、お前……! 俺を舐めてるのか!?」


 今ここにはグラインしかいない。あたしは魔封じの手枷を付けられた上に、椅子に縛り付けられていた。罪人の人権なんてあったものじゃないね。あたしが何もできないもんだから、グラインは散々あたしを痛め付けてきやがった。


 まっ、この手枷を付けられる一瞬のうちに半年は効果が続く身体強化魔法やら自動回復魔法やらを掛けておいたから、痛くも痒くもないんだけど。


「そりゃ、舐めたくもなるよ。あんた、いい加減気付きなって。あたし、無傷じゃん。ノーダメージじゃん。あんたじゃあたしに傷一つ付けられないんだって」

「う、嘘だろ……!?」


 いや、嘘だろ、はこっちの台詞だって。今、気付いたの、こいつ?


「あのさ、この件って王様も絡んでるの?」

「それが今、何の関係がある!?」

「いや、王様が関わってるのなら不自然だなって」

「な、何がどう不自然なんだ!?」

「まず、ここにあんたが一人しかいないってのが不自然でしょ。普通、罪人の取り調べには数人が立ち会うもの。冤罪や無理な自白を強要を防ぐためにね。そして、その取り調べもなしにいきなり拷問する? 魔王の娘との関わりは認めてるわけだよ? 上手くいけば、その娘の討伐だってできちゃうのに」

「うっ……! そ、それは、だな……!」


 やっぱ、こいつバカだ。あたしはこんなバカな奴の仲間になりたくて修行してたのか……。いやまあ、歴代の勇者はもっと利口だったと思うけども。

 利口だったと信じたい!


「今からでも遅くないよ。王様に報告しな?」

「お、俺に指図するな!」

「じゃあ、王様でなくてもいいよ。側近の人に相談してみなって。あたしがあんたの仲間になるってパターンもあるかもよ?」

「な、何……!?」

「自分で言うのも何だけど、あたしレベルの魔術師を捕らえておくなんて勿体ないでしょ。使い勝手のいい駒として、王様に差し出したいに決まってる。じゃあ、その勝手のいい駒にするにはどうしたらいいか。勇者の支配下に置くのが簡単でしょ」

「た、確かに……。まあ、今のお前は何もできない状態。少し時間を掛けてもいい、か……」

「そうそう。あたしは別に逃げないし。また天井の染みでも数えてるよ。いーち、にー、さーん……」


 もう話す気ないよアピールをすると、グラインはあからさまに舌打ちをして、拷問部屋から出て行った。

 はてさて、これで向こうはどう動くかな?



◇◇◇◇◇



「クロエ、ファーランド家はどうだった?」

「協力してくれるそうです。ミーシャさんの方はどうでしたか、オリヴィアさん?」

「こっちもオッケーよ」

「では明日、ファーランド家とオルレアン様が国王様への謁見をお伺いします。通常なら二、三日掛かってしまうそうなんですが、緊急と言うことで即日の謁見を申し込むようです」

「そこで、私たちが集めた嘆願書や署名を渡すのね」

「はい。残念ながら、私たちは王の間に行くことはできないので、オルレアン様とユミリアさんのお父さんが手渡すと言う形にはなりますが……」

「だが、王城の前で我々騎士団が抗議の声を上げよう」

「ウェルさん!? いいんですか、そんなことをして!?」

「オルレアン様も了承済みだ。他にもミア殿を救おうと、この王都に駆け付けている、とのことだ。騎士団も移動の手伝いに動いているぞ」

「何から何まで、ありがとうございます!」

「いいのだ。皆、それほどまでにミア殿を助けたいと願い、そしてそれほどまでにミア殿のことが好きなのだ」

「それは……ちょっと嫉妬しちゃいますね。誰にもあげませんからね、ミアさんは」

「やはり、クロエ殿が最大で最強のライバルだな」



「ウェル、ありがとう」

「何のことかな、オリヴィア殿?」

「クロエのこと」

「……?」

「あの子、あれでも今、とてもプレッシャーを感じているの。不安で押し潰されそうなほどに。それでもミアと一番長い付き合いなのは自分だからって、その自分がやらなきゃって、どうにか奮い立たせているんだと思う」

「……私もそうだからな」

「ウェルが?」

「私は騎士団の中ではまだまだ若い方。私よりも年齢が上の団員もいるし、ベテランの方もいる。そんな中で私は団長を任されているのだ。今でも不安だよ、私が団長でいいのか、と」

「それは……重荷? 私たちはクロエに頼りすぎているのかしら……?」

「いや、そうではない。寧ろ、ありがたいよ。私を頼りにしてくれている者たちがいるから、私はブレずに前へ進めるのだ。重圧があるからこそ、それを跳ね除けようとする勇気が生まれる」

「そうね。クロエは私が思うほど柔な子じゃなかったわ」

「ああ、いい師匠がいるからな」

「良くも悪くも、純粋なクロエに影響を与えすぎちゃう師匠がね」



◇◇◇◇◇



 六二一……さ――。


「へっくちっ!」


 誰かあたしの噂を……――って、どこまで数えたかわかんなくなったじゃん!


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引き続き宜しくお願い致します。

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