ほのぼの署名活動
「お、オリヴィアさん! ミアさんが! ミアさんが……!」
「落ち着いて、クロエ。この事態は予想外でしょうけど、国王軍に投降したのはミアなりの意志があってのことだと思うわ」
「そ、そうなんですか……?」
「あの子、私たちを巻き込まないよう、一人で背負って投降したでしょ?」
「私たちだって同罪なのに……!」
「それなのよね。ミアがしたことは、そんなにも罪深いのかしら?」
「……どう言うことですか?」
「アルフィード様とミアが繋がっているのが事実だとしたら、国王軍や勇者としてはそれを利用したいと思わないかしら? まずは穏便に、ミアを外交官みたいに使って、アルフィード様が次の魔王にならないことを誓わせるとか」
「た、確かに……。人間との友好条約みたいなものを取り付ける、とかもできますよね」
「そうなのよ。利用価値はいくらでもあるはずなのに、いきなり強引な捕縛って言う手に出た。正直、利口な手段だとは思えないのよね」
「裏がある。そう言うことですか?」
「多分ね。けど、それを炙り出すには人数が足りないわ。協力者を搔き集めるわよ」
「はい!」
◇◇◇◇◇
「待て、止まれ! 何者だ?」
「あ、あの、私はウェルさんに謁見をお願いした――」
「おお、クロエ殿。久しぶりだな」
「こ、この方がグランベルジュのオーナー……!? クロエ・ゼルファ様……!?」
「警備の者が失礼した。どうぞ、中へ」
「し、失礼します」
「しかし、一人とは珍しい。ミア殿はどうした?」
「……そのことで話があって来たんです。ミアさんは……国王軍に捕縛されました」
「な、何だと!? い、いや、すまない、取り乱した……。中で詳しく聞かせてくれ」
「オルレアン様にも是非」
「ああ、当然だ」
「オルレアン様、お時間を作って下さり、ありがとうございます」
「いや、よい。それよりもウェルに少し話は聞いたのだが、ミア殿が国王軍に捕縛された、と?」
「はい。先代魔王の娘様、アルル様と繋がっていることが反逆罪だと」
「魔王の娘と……? さすがミア殿、顔が広い。どのような付き合いであったか、聞いてもいいか?」
「はい。最初はミアさんにアルル様が修行を付けてほしいと頼みに来られたようです。それから……――」
「……ふむ。話を聞く限り、友好的な関係が築かれているように思える。確かに、普通であればまずは対話を求めるはずだ。いきなり捕縛とはあまりに野蛮。国王様がそれを命ずるとは思えないのだが……」
「けど、確かにあの場には勇者様と国王軍がいたんです!」
「わかった。私も国王様に謁見を求めよう。ウェル、お前はクロエ殿の護衛をしろ」
「心得ました!」
「い、いえ、そこまでお世話になるつもりは……」
「何が起きているかわからない状況で、その渦中の人物を庇うような行動をしていれば目立つのが当然だ。クロエ殿に危険が及ぶ可能性は高い。今まではミア殿がいてくれただろうが、今はいないのだ。ミア殿に比べれば頼りないかも知れないが、ウェルを傍に置かせてほしい」
「た、頼りないなんて、そんな……! 凄く心強いです! あ、ありがとうございます!」
◇◇◇◇◇
「この前のアンクルデーモンの記録は……確かこっちに――」
「リズさん!」
「うひゃいっ!」
「ご、ごめんなさい、リズさん。驚かせてしまって……」
「く、クロエちゃん!? どうして研究所に……!?」
「実はミアさんが大変なことに……」
「ミアさんが!? 詳しく聞かせて下さい!」
「……なるほど。それでクロエちゃんは今、仲間を募るためにライラックの騎士団と街を転々としている、と。わかりました、協力させて下さい」
「ほ、本当ですか!?」
「当然ですよ。ミアさんのお蔭で魔物学がどれだけ進歩したことか。私が認められたのもミアさんのお蔭です。ミグリッドの学者全員、一丸となって嘆願書を王都に送り付けます」
「もしかしたら、リズさんの今の立場が危うくなってしまうかも知れないのに……。ごめんなさい、こんなお願いをして……」
「構いませんよ。こんなことで危うくなるような立場なら、私はいりません。学びを進める者に寛大であれ。それがミグリッドの教えです。ミグリッドがミアさんの偉大さを学ぼうとしないのならこんな街、私の方から願い下げです」
「リズさん……ありがとうございます!」
◇◇◇◇◇
「オリヴィアよ、今の話は本当か!?」
「はい、全て真実です」
「アルルのせいでお姉様にあらぬ疑いが掛かるとは……! 今すぐ王都に行くぞ!」
「お待ち下さい、お嬢様。それではミア様の嫌疑がより深まるでしょう」
「では、どうすればいい!?」
「ミア様は我々にとっても必要なお方。魔族の地位を取り戻し、人間との共存を果たすためになくてはならない存在です」
「そんなことはわかっておるわ!」
「では、それを人間の王に伝えましょう」
「ミアの潔白をアルフィード様の方から証言する。そう言うことですか!?」
「私たち魔族が表舞台に出るのは尚早でしょう。場が余計に混乱し、それが民衆にも伝われば面倒になる。しかし、書簡程度なら上の者たちのみで話し合いもできるでしょう」
「世論までミアの敵になってしまうのは確かに面倒だし、何より見たくないです」
「そうか。ならば、手紙を認めようか。筆と紙を頼む。ああ、あと、イリアにも何か一筆書かせろ」
「……あの子、ふざけないかしら」
「念のために見張っておいてくれ」
「は、はい……」(あの子、本当に信用ないのね……)
◇◇◇◇◇
「コレットさん、お忙しいところすみません……」
「いえいえ、ようやく一人前とは言え、まだまだ駆け出しですから。それに、ミアさんのピンチに何もしないわけにはいきません」
「でも、まさかコレットさんのお家が王都との繋がりがあるとは思いませんでした」
「繋がりって言っても、王都で錬成のお店をしているだけですけどね。本来なら、アップルビー家の名前だけでミアさんを助けることができたら良かったのに……」
「けど、コレットさんたち錬成術師の皆さんが協力してくれただけでも、とても心強いです。まさか、アップルビー家の一声でここまでの署名が集まるとは」
「今、活躍している錬成術師のほとんどがお祖母ちゃんにお世話になった人たちなんですよね。だから、そのお祖母ちゃんと親交があったミアさんだから、みんな協力的になってくれたんだと思います」
「でも、錬成活動の中断までして良かったんですか? これだと、これからの錬成術師としての立場が……」
「錬成術は国のためにあるものじゃありません。国の民の暮らしを豊かにするためのものです。お国がそっぽを向こうが、ボクたちを必要としてくれる人たちがいる限り、錬成術は寄り添い続けるのみです」
◇◇◇◇◇
「クロエ殿、冒険者たちからの署名もかなり集まったとのことだ」
「ビスクさんやモブオさん、コモブさんに声を掛けたのは正解だったみたいですね。あの人たちは冒険者としての顔は広い。これまでグランベルジュに来てくれたお客とも、小さいながらの繋がりは数多く持っている」
「確かにそうだが、顔が広い、で言えばミア殿――グランベルジュも相当なものだと思うぞ?」
「今まで、たくさんの人の依頼を受けてきましたからね」
「しかも、それが世界各国にいるんだ。うちの魔術部隊も全員、転移魔法で疲れ果ててしまった」
「ごめんなさい、無理を聞いてもらって……」
「いや、構わないさ。これも修行のうちだと捉えれば」
「今日はうちの宿でゆっくり休んで下さい。夕方にはオリヴィアさんが戻る予定なので、豪華な夕食を作ってもらいましょう」
「楽しみだ。それで、明日は王都の方に向かうのか?」
「はい。植物学者のミーシャさん、それからリベール女学院の皆さんにお会いしたいです」
「何ともまあ、豪華な面々だな」
「どっちが世界を敵に回したのか。目にものを見せてやりますよ」
「ふははははは……!」
「えっ、な、何かおかしかったですか?」
「いや、すまん。今の強気な笑みがミア殿にそっくりでな……。クロエ殿はミア殿によく似ている」
「……そうだと嬉しいです。私はミアさんみたいになりたくて、少しでもミアさんに近付きたくて、今もこうして努力して、修行をしてますから」
「では、その成果を早くミア殿に見てもらおう」
「はい!」
◇◇◇◇◇
「おーい、起きろ。起きろって。死んだか?」
「げほっ! ごほっ、ごほっ!」
「タフだねぇ、魔術師のくせに」
「……」
「魔術師なら魔法を使ってみろ。ほれ、どうした?」
「……」
「ああー、使えないんだったか? ヘボすぎて」
「はぁ……。はぁ、はぁ……」
「息も絶え絶えだな。そろそろ終わりにしようか」
「くっ! も、もう、ダ……め……」
よければ、いいね ブックマークして頂けると励みになります。
引き続き宜しくお願い致します。




