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ほのぼの……急展開!?




「お、おい!? 大丈夫なのかよ、バルバトス!」

「ああ、問題ない。寝ている方が体に毒だ。それよりも……俺をやったのは……」

「安心しろ、と言うのが正しいのかはわからないが、魔王の小娘じゃない」

「確かか!?」

「直接確認したわけじゃないが、あんたを攻撃した魔力の残滓は小娘のものじゃなかった」

「じゃあ、まさか小娘の護衛か……?」

「その可能性が高い、が……今はそれどころじゃないかもな……」

「何かあったのか?」

「あんたから離れ、小娘の方へ流れてる奴らが出始めた」

「なっ……! かなりの数なのか!?」

「今はまだそう多くはない。だが、放っては置けない事態ではあるな」

「くっ……」

「どうする? 引き止めるか?」

「……いや、情けない姿はこれ以上見せられない。起こすとしたら次への行動だ」

「次への行動?」

「あの場にはグラインもいた。そして、あの〈ファイアボール〉の意図するところはわからないが、あれはグラインにも被弾したはずだ」

「ああ、あんたと同じくらいのダメージは負ってたぜ」

「だとしたら、あいつも今、俺と同じ気持ちさ」

「同じ気持ち?」

「腸が煮えくり返っている」

「おいおい、まさか……!?」

「手を組むかどうか。それはこれから考えていく。だが、当面の俺たちの敵は同じだ」



◇◇◇◇◇



 みんなそれぞれが与えられた作業をする中、あたしは自室にイザベラ先生を招いて、そこで話をすることにした。


「まず聞いておきたいんだけど、ファーランド家はどれくらいの力を持っている貴族なの?」

「古くから魔導裁判や魔導法務局に携わっていた貴族で、法の番人とも呼ばれる一族の一つです。ユミリアさんのお父様は魔導最高裁判所の裁判官でもあります」

「だったら、罪人から恨まれることもあるよね?」

「……否定はできません。ユミリアも幼い頃に誘拐されかけた、と話していましたから」


 しかも、魔導最高裁判所なんて普通じゃ手に負えないような極悪人を裁くような場所だ。そんな奴の恨みを買ったんだとしたら、面倒この上ないのは確実だ。


「ユミリアの異変はいつから?」

「私が気付いたのは二、三ヶ月ほど前のことでしょうか。生徒に聞くと、もう少し前から様子が変だったと話す者もいます」


 割りと最近、か……。だとしたら、何かのタイミングを窺っていた……?


「この修学旅行の参加に、両親は賛成だったの?」

「ええ。いい気分転換になるのではないか、と。それに、ユミリアさんも楽しみにしていた、と両親から聞いています」

「楽しみに……?」


 まさか、呪詛の発動トリガーを「修学旅行のタイミング」で設定したのか……? 同学年の生徒が一堂に会する場所で暴れさせ、友達やクラスメイトを殺させるために。


 そうじゃなかったとしても、想像するだけで胸くそ悪いっ!


「ですから、ミアさん! どうか、ユミリアさんを助けて下さい! お金ならいくらでも、いくらでも払いますから!」

「イザベラ先生、やめて」

「み、ミアさん……!?」

「お金はもう貰ったはずだよ」

「えっ、いや、しかし……」

「宿屋の出張費はもう貰ってる。だから、この宿屋でリベール女学院の生徒が回復するのに費用は掛からない。出張費を払えば宿を使い放題。それがグランベルジュの売りだからね」


 それが小さな怪我でも、瀕死の状態でも同じだ。回復させて元の状態に戻す。それが宿屋の務めなんだから。


「助けるよ。必ず。元の元気なユミリアに、回復させてあげる」



 イザベラ先生には犯人に心当たりはないようだけど、ファーランド家を恨んでいるであろう奴らは大勢いるってことはわかった。

 ここからはオリヴィアとミーシャが頼りだ。けど、あたしも何もしないわけじゃない。少しでもユミリアの負担を少なくしてあげないと。

 そのためにユミリアが寝ている客室に向かおうとしていたんだけど、廊下の向こうから何人かの生徒たちがこっちに駆け寄って来た。


「ね、ねえ、ミアちゃん! ユミリア、何かの魔法を掛けられてたってほんと!?」

「それで危ない状態だって!」

「ユミリア、大丈夫だよね!? 助かるよね!?」


 そこにはさっきのユミリアの豹変を目の当たりにした生徒もいた。口では変な子扱いしていたけれど、実際はユミリアのことを心配していたんだね。


「大丈夫。この宿にいる以上は絶対に回復させるから。みんなは先生の指示に従って」

「わかった。お願いね、ミアちゃん!」


 客室に戻っていく生徒を見送ってから、あたしはまた廊下を駆け抜けた。


「クロエちゃん、ユミリアの様子はどう?」

「状態は安定していますよ。ただ、こっちの体力が心配なだけで……」

「ごめんね、無理させて。強化魔法、追加で掛けとくから」


 ユミリアは今、客室にある左右のベッドを交互に使っている状態だ。片方で寝ている間にもう片方のベッドメイクをして、回復量が落ちてきたら引率の先生が浮遊魔法を使ってユミリアを移動させる。そして、今まで寝ていたベッドを綺麗にして、また移動。それの繰り返し。


「すみません。けど、ミアさんも相当キツイんじゃ……? ユミリアさんに結界魔法を張って、あの黒い稲妻が私たちに当たらないようにしてくれてますし……」


 今も時折、ユミリアの体を黒い稲妻が走る。けど、それはあたしが張った結界の外には漏れず、クロエちゃんたちには当たらない。

 しかも、それはあたし考案の特殊な結界で、稲妻の魔力をユミリアに還元させるようにもなっているんだ。そのお蔭で確かにめっちゃ魔力使うんだけどね。


「別に構わないよ。ここから先の主役はミーシャだからね。ミーシャが作った薬草が、この子を救うんだ。あたしはそれまでの延命治療に徹すればいいんだから、楽な方だよ」


 ユミリアには催眠魔法を掛けてある。意識があると魔力を暴発させる危険性があるからだ。だから、あたしは定期的にそれを掛け続けていて、今も魔法効果を継続させようと手を伸ばしたんだ。


 その瞬間、あたしの右腕は一瞬で吹き飛んだ。


「み、ミアさん……。う、腕が……腕が……!」

「くっ! 嘘でしょ……!?」

「いやぁあああああー!」


 右腕の肘から先がなくなって、そこから夥しいほどの血が出ていた。

 めちゃくちゃ痛い。当たり前でしょ。腕、切断してんだよ? 死ぬほど痛いし。

 けど、死ねないんだよな、これが……。


「み、ミアさん! ミアさん!」

「落ち着いて、クロエちゃん。大丈夫だから。ごめんね、驚かせて。すぐ治すよ」


 治癒魔法を極めれば、欠損した体を治すことも容易い。時間が経ってると難しくなるんだけど、失ってすぐの回復はあたしなら簡単だ。

 左手をそっと切断部に当てて、魔力を籠めると、元通りの右腕が……生えたって表現が一番近いのもかも知れないね。

 ただまあ、服は戻らないから右だけタンクトップみたいになっちゃってるけど。


「い、今、クロエの悲鳴が聞こえたけど――」


 慌てた様子で駆け込んで来たオリヴィアは、あたしの足許に広がる血溜まりを見て、息を呑んだと同時に大体のことを悟ったように見えた。


「ごめん、オリヴィア。ちょっとの間だけクロエちゃんをお願い」

「わかったわ。あなたは大丈夫なのよね?」

「体はね。ただ、精神的には一撃喰らったかも」


 オリヴィアはクロエちゃんを抱き寄せ、落ち着かせるように背中を擦っていた。あたしもあんな風に優しく介抱されたい気分だよ、マジで。


「この呪詛魔術、あたしが知ってるマレディクシオンじゃない。あたしが知ってるものよりも、進歩し進化したものだ」

「そ、それってつまりどう言う……?」


 あたしは元に戻った右手で、大きく頭を掻いた。


「魔導理論の再構築が必要になる」

「再構築って……どれくらい掛かるものなの?」

「あたしはマレディクシオンの魔導構築に五年くらいの年月を費やした」

「ユミリアの呪詛魔術は今日中に解かないと、彼女は死ぬのよね……?」

「うん」


 あたしとオリヴィアは時計を見上げる。


 時刻は午後二時に迫っていた。


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