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ボクと愛の出会い

 高等部2年の秋、ボクは愛ちゃんと出会った。

 これはボクと愛ちゃんの最初の一歩を踏み出すまでのお話。


 ◆


 お昼休みボクはいつも一人で誰も通ることの無い場所にあるベンチで昼食をとる。

 高等部と中等部を遠回りするように作られた道。


 高等部から中等部に行くだけなら連絡通路を使えば良いので、わざわざ遠回りとなるここは誰も通らない。


 だけどその日は違った。


「先輩お隣良いですか?」


 声をかけられた事に少し驚き、食事を中断して顔を上げる。

 制服とリボンの色から中等部3年生だとわかる。

 ボクは驚いた事を隠すようにいつも通りの笑顔を浮かべて「ああ、良いよ」と答えていた。


「失礼します」


 そう言ってから彼女はベンチにハンカチを置いてその上には座った。


 お互い無言でお昼ご飯を食べ進める。

 ボクは自分で作っている手作り弁当。

 隣に座る彼女は購買で買ったと思われるサンドイッチ。


 お昼を食べ終わり弁当箱を片付け、水筒から紅茶をコップに注ぎ横に座っている彼女に差し出す。


「飲む?」

「ありがとうございます」


 ボクからコップを受け取り口を付ける。


「あちゅ」

「ぷっ、あははははは」

「先輩酷いです笑う事無いじゃないですか」

「ごめんごめん、でも「あちゅ」ってははははは」

「もう知りません」


 そっぽを向いてしまった、ついついおかしくて笑ってしまった。


「ごめんね、ボクの名前は王理、学園生なら王子さまと言ったほうがわかりやすいかな」

「王子さま?なにの王子さまかは知りませんけど、私は愛って言います、よろしくお願いします王理先輩」


 今度こそ本当に驚いた、この学園に通っている生徒で、ボクを知らない人がいるなんて、自慢ではないけど王子さまと言えばボクに行き当たるそう思っていた。

 それは中等部も高等部も下手をすれば初等部でさえもボクを知らない人はいないと思っていた、ボクの事を知らない人に出会うなんてすごく新鮮だ。


「先輩はどうしてこんな所で1人で食事しているんですか?」

「ボクは食事は1人でゆっくり楽しみたいんだよ」


 嘘は言っていない、食事をゆっくり食べたいのは本当。

 教室で食べていると下級生が突撃してきたりするので逃げてきた事は言わないでおく。


「愛さんこそどうしてここに?」

「愛でいいです」

「え?」

「愛とだけ呼んで下さい、なんかその方が良い気がします」

「わかったよ愛」

「はい、ありがとうございます」

「愛もボクの事王理って呼んでも良いんだよ」

「そ、それは止めておきます、人に聞かれたら致命的な気がするので」

「うん……それがいいかもね」


 少し寂しい、ボクの名前を気兼ねなく呼んでくれるのは初等部からの付き合いがある友達だけ、他の人は決してボクの事を名前を呼んでくれない。


「そう、そうでした私がここに来た理由でしたね、私友達いないので……」


 そう言って俯いてしまった、悪いことを聞いたのかもしれない。


「それは、その、ごめん」


 少し申し訳ない気がしてそれしか言葉が出なかった。

 暫くの沈黙が続きボクはどうしようかと内心でオロオロしていると笑い声が聞こえてきた。


「くっふっふふ、あははははは、ごめんなさい嘘です、さっきのお返しです、今日はただ外の空気を吸いたかっただけです」


 彼女は俯いていた顔を上げて笑っている、その笑顔を見てボクはドキリと心臓が高鳴るのを自覚した。

 なんて楽しそうに笑うのだろうか、その笑顔を見た瞬間ボクはきっと彼女の魅力に惹きつけられていたのかもしれない。


 遠くで予冷のチャイムが聞こえた、急いで戻らないと。


「王理先輩、明日もここに来ていいですか?」

「そうだね、その先輩と言うのを辞めるなら来てもいいよ」

「えっと王里様?」

「どうしてそうなる、はぁまあ良いけど好きに呼んで、今の季節ならお昼はたいていここで済ますから来たければ来ればいいよ」


 普段なら断っている、そしてお昼を食べる場所を別の所に変えている、でもなぜか彼女には素直にそう答えていた。


「ありがとうございます、それではまた明日ですね」

「そうだね、また明日」


 そう言ってボクたちはそれぞれの校舎へと歩き出す。

 なんだか久しぶりに晴れ晴れとした気分になった。

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