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三宅町の赤いカブ  作者: Elena
9/55

自己紹介

 昼休みになった。

 カイは、タキが作った弁当を広げる。

「一緒に食べてもいいかな?」

 と、男子生徒が言う。

「あっ別にいいけど―。」

 目を泳がせながら言ったカイ。

「よし!じゃ、こっちへ来い。」

 男子生徒に引っ張られる。カイは横目で、アカネを見ると、アカネは一人で弁当を広げていた。

「あの、あの子も―」

 と、カイはアカネを指したが、男子生徒は小声で言った。

「赤金?止めとけあんなの。華族の娘だ。下手に声かけると何されるか分からん。」

 と。

 男子生徒は、男2人、女3人のグループを作っていた。

 カイが含まれて、男3人、女3人になり、男女比が同じになった。

 なので、人数調整のために入れられたのかと思ったカイ。

 さっさと弁当を平らげてしまおうとしたが、タキの作った弁当は何かと凝っていた。以前は、メスティンに炊いた米を入れ、その上にレトルトをかけるだけの弁当か、コンビニ等で買った物で済ませていただけに、そのギャップが激しい。

「静岡から来たんだっけ?」

 と、男子生徒。

「そうだ。静岡県浜松市から。」

 と答えた。

「浜松?HONDAの発祥の地だ!」

「あと。ヤマハとスズキもある!」

「バイク好きにとっては、聖地のような場所じゃん!」

 浜松と答えただけで、ヤンヤヤンヤ始まるグループ。

 それも、話題はバイクのようだった。

「ってことは、親父さんはバイクに関わる仕事を?」

「-。」

 黙り込んだのち、

「死んだ。父も母も。」

 と答え、

「親父は浜松オートレース場所属のレーサーだった。でも、レースと関係ない奴に殺されるような形で死んじまって―。」

 とだけ答えるカイ。

「あっごめん。」

 と、謝る男子。

「オートレース?って、オーバルの公営ギャンブルの!?養成所に入るには、30倍近い競争率の試験を突破しなければならず、更に厳しい訓練を経なければならないってあの!?」

 今度は女子。

 カイは頷いた。そして、自分も実は受けていたと言ったら、大歓声を上げた一同。だが、受かっていた話はしないでおいた。そんな難関を突破したのに、その矢先に父が死んで、経済的理由で辞退して、この町へ来たと言ったら、哀れな奴だから、同情を誘っているように思われると思ったからだ。なので、最後の試験で落ちたという事にして誤魔化してしまった。

「俺は、大間々。よろしくな。バイク乗ってんだろ?」

 と、最初にカイを誘った大間々という男。

「どうして、それが?」

「見ていただろう?俺のカワサキKLX250。」

 思い出した。朝、駐輪場を見回した時、目に入った一台のグリーンのKLX250の姿を。あれは、この大間々という奴のものだったらしい。

「俺は黒保根。ホンダCRF250Lに乗ってる。」

「私は神梅カンバイ。乗ってるのはこの中では一番ダサいだろう、スーパーカブ50。あっでも、ブロック修正して52㏄になっているから!」

 神梅という女子は必死になって言う。

「カブに次いで言うのはあれかもだけど、私は根利!このメンバーでは一番の存在感を放つだろう、HRC CBR250Rに乗ってる!たまに、ツインリンクもてぎとか、筑波サーキットとか走ってる!ちなみに、筑波サーキットのレースにスポット参戦することも決まったんだ。応援、よろしく!」

「筑波サーキット」という単語に、肩を落としたカイ。

 自分もそこで訓練を受けられたのにと言う思いが浮かんだからだ。

「最後に、私は相生。ヤマハYZ250FXに乗ってる。このメンバーの中では一番の新型かな。」

 皆が自己紹介する。

 カイは改めて、それに答える。

 名前と、バイクと、何か一言。

「水沼カイです。えっと、その―。」

 意外なほどに声が出ない。やはり、友達を作らなかったからか。

「ホンダのCT125。ハンターカブ。親父の形見のバイクに乗っている。ええっと―」

 何か一言が出てこない。

「よ、よろしく。」

 としか、出なった。


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