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三宅町の赤いカブ  作者: Elena
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赤金の条件

 かなり大きな屋敷。

 廊下を歩くだけで、散歩のようだ。

 タキに言われた、自分に宛がわれる部屋に、自分の荷物を入れ、それをタンスや押し入れの中へ押し込み、CT125のリアボックスに入れていたスペアパーツも押し入れに入れたのだが、父と母の遺影代わりの小さな写真をどうしようかと考える。

 空いていた本棚の端に目を止める。

 とりあえず、ここに、遺影代わりの写真を置いておき、地震等で倒れないよう、透明養生テープで固定し、そこに簡易的な仏壇のような物を拵える事にした。

 線香立ては置いたものの、火災の恐れがあるので線香も焚けないので形だけの物。その隣には小さいおりんを置いた。

「チン」と、おりんを鳴らし、手を合わせる。

(親父。母さん。今日からここでお世話になることになりました。前いた町ではもう生きることは限界で、汽車見って家令に言われるまま、家も売り払うはめになり、三宅町市白上って場所で住むことになりました。生きるためとは言え、勝手な事をしてごめんなさい。)

 と、手を合わせていた時だった。

「そんなに、お父さんが大切だった?」

 と、娘の声。

 どうやら、ドアを開けたままだったらしい。

「-。男手一つで、ここまで育ててくれたのに、あっけなく死んじまった。」

「そう。私には分からない。」

「あの、両親は?」

「父は居ない。婿入りしたらしいけど、浮気して逃げた挙句、どこで何をしているのか知らない。母は居るけど、滅多に家に帰ってこない。」

「-。」

「もう夕食よ。リビングに来なさい。それとも、部屋食が希望?」

「-。今、行く。」

 カイは言いながら、部屋を出る。

 娘に案内される。

「あの、名前は?」

「-。アカネ。」

「赤金アカネでよろしいですか?」

「他人行儀になったり、ため口だったり。妙な奴。」

「-。この家に住むに当たっての条件って、何か分かる?」

「条件?ああ、母が何かしら条件付けると言っていたけど、それが何かは知らない。タキに聞いて。」

 リビングに通された。

 一応、タキはカイを歓迎するように見せようと、ご馳走を用意していたのだが、居候になるのに、ご馳走を用意される立場に無い。

 それ以前に、父が存命だった時も、オートレースのシーズンは一人で食事する事が多く、こうして、誰かと一緒に食事するのは慣れない。

 おまけに、オートレース養成所の食事時間が10分なので、それに合わせて一気に掻き込もうとするカイの姿を、アカネは奇妙な目で見る。

 どこからどう考えても10分で食いきれる量ではない。

 タキは、食べながら親睦を深めて貰う事を狙っていたのだが、どうも嚙み合わぬ二人を見るに見かねた。

「カイ。君には、赤金の家で暮らすに当たって、条件がある。」

 食事する手を止めて、タキに向き合う。

「どのような条件でしょうか?」

「そう、身構える事は無い。」

 と、タキは言う。

「これは、アカネ。君にもいい影響をもたらしてくれる物だと、私は思うよ。」

 と言うタキに、アカネも手を止める。

「どういうこと?」

 と、アカネ。

「まず、アカネ。君にはカイを受け入れて貰う。そして、カイ。君はアカネと友達になって貰う。それが、この家の主たる、赤金栄子が示した、カイが赤金家に住む条件だよ。」

「-。」

 カイは、理解できなかった。

 いきなり、この娘と友達になれと言われても、今の今まで友達を作ったことは無いカイにとって、それは難題であった。


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