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三宅町の赤いカブ  作者: Elena
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友達

 しかし、カイもまた、結局のところ渡せず、タンデムシートにカバーかかけたままになってしまったヘルメット。

 この状態で、雨でも降ったらおしまいだ。

 そのまま、また翌日も学校へ行く。

 この日、またアカネがバイク同盟の昼食会に参加してきた。

 話題は、アカネの免許取得に向けた動きについて。

 アカネは、三宅町市の隣町の教習所に行く事になったらしい。

 教習開始は来週から。

 カイとアカネの会話、少ないまま。

 結局、今日もまた放課後になる。

 アカネはまたも、長ったらしいホームルームにうんざり。だが、ここで今日、三宅町鉄道の定期を買う事になっていたと思い出す。

 今から駅に行って、定期を買うにも、それをやっていたら列車に間に合わなくなってしまう。おまけに、教習所の最寄り駅までのJR線の回数券も買わねばならない。

 なので、アカネはもう諦めて、ゆっくりと三宅本町駅に歩く。

 それを、カイのハンターカブが追い越していった。

「はぁっ」と、アカネは溜息。

 ところが、駅にどういうわけか、カイのハンターカブが止まっていた。

 そして、駅の掲示板に貼られたバイト情報をチェックするカイ。

 それを尻目に、定期券と回数券を買うアカネ。

 買い終えると、まだカイはバイト情報を調べていた。

「エンジンの点火プラグぶっ壊して、金欠気味だから、稼げるバイトないかと思ったんだけど、なかなか無いもんだなぁ。」

 と、カイは溜息。

 アカネは「そう」とそっけなく言った。

 カイは次の列車の時間を見るが、まだある。

 自分はいつでも、ハンターカブで帰れるのだが、アカネはそうも行かない。

 時間に縛られる公共交通機関を利用するアカネは、今、時間と言う鎖で公共交通機関という物へ磔にされている。

 自分は、そんなものも無く、ハンターカブで自由に飛び回れるが、目の前にいる女の子は、蜘蛛の巣に絡めとられた蝶。

 ふと、タンデムシートを見ると、そこには積んだままのスペアヘルメット。

 カイ、カバーを外して、タンデムシートに座れるようにすると、箱からスペアヘルメットを出し、アカネに渡す。

「落とすんじゃねえぞ。貸してやる。無期限でな。」

「えっ?」

「分かったらとっとと被れ。それから、顎紐はしっかりと締めろ。なんかの拍子に脱げると大事だからな。」

 アカネは見よう見まねで、ヘルメットを被ると、またもや見よう見まねでヘルメットの顎紐を締める。

「じゃ、乗れ後ろに。」

 言いながら、カイは背負っていたリュックをセンターキャリアに固定する。

 アカネ、タンデムシートに跨った。

「とっとと帰るぞ。」

 と、カイは言うと、ドルドルドルとエンジン音を響かせて、ハンターカブを発進させた。

 少し走ると、アカネが乗り損ねた列車に追いついた。

 DD51が牽引する客車列車だ。

 列車と並ぶが、カイはその途中で道を変える。

 以前、アカネから聞いた旧道。

 学校の同級生も乗るこの列車、アカネと二人乗りした状態で並走して変な噂が立つのを嫌ったので、敢えて旧道に逃げたのだ。

 旧道は手入れされていない林道。

 だが、大間々のようなオフロードバイクに乗る奴等がたまに走るらしく、バイクのタイヤ痕が僅かにあった。

 そして、旧道からは、白上地区の町が見えた。

 思わずカイは、そこでハンターカブを止めて、景色を見てしまう。

「カイ。ありがとう。」

 と、アカネ。

「えっああ。今日のは気まぐれだよ。たまたま、スペアヘルメットがあったから。」

「違う。そうじゃなくって、ここに来てくれてありがとう。」

「えっ?」

「あのさ、カイ。私は、家が元は華族だったから、クラスではずっと浮いたままだった。でも、カイが来て、カイを通じて、バイク同盟とも話せるようになった。根利とも、話せるようになれた。ありがとう。」

 カイは照れ隠しに「ふん」と鼻を鳴らして、ヘルメットを被り直す。

「カイ。カイがもしよければ、でいい。その、友達になって欲しい。私と。」

「バーカ。そんなの今更か。」

「えっ?」

「もうさ、バイク同盟やらとホームパーティーやっているし、俺とケンカもするし、それで友達じゃないって言ったら何になるんだ?」

「-。」

「郵便ボックスは、アカネが免許取って、バイク買うまでは無くていいや。」

 と、カイは言った。

「郵便ボックス積んでいたら、アカネを乗せられないからな。」

 そう言ったカイは、笑っていた。

「ありがとう。カイ。」

 アカネは笑ってまた、カイのハンターカブのタンデムシートに跨った。


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