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三宅町の赤いカブ  作者: Elena
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赤金の家

 コンテナトラックに次いで、敷地に入って行く。

(汽車見さん?が表に出ていてくれれば、話はラクかもだけど―。)

 と思いながら、バイクから降り、止めて置ける場所を転がしながら探していた時、勝手口らしき所のドアが開いて、中から女の子が出て来たものだから驚いた。

「おわぁっと!」

 バランスを崩して、CT125をひっくり返しそうになった。

 赤い郵便ボックスには、他の荷物に混じって、父と母の写真も額に入れてある。

 一応、緩衝材は入っているが、割ったら一大事だ。

「-。」

 女の子は冷たい目つきでカイを見つめている。インスパイアのリアシートに座っていた女の子と気付いたのはその時だった。

(あっ!えっと―。)

 とっさに、オートレース養成所の面接試験を思い出す。

「水沼カイです!今日からお世話になります!よろしくお願いします!」

 腹から必死になって声を出した。

 それでも、「聞こえない!」とか、「声が小さい!」と怒号が飛んでくるレベルだろう。

 なので、返事がないのは、自分の挨拶の声が小さいからだと思ったカイ。

「すぅっ」と、息を吸い、もう一度と思ったが、その前に、バイクを抱えて挨拶するバカは居ないと気付き、CT125のスタンドを立てて止め、エンジンも止めた上で、改めて挨拶するのだが、それでも女の子の反応はない。

(えっ。えっと、どうすれば―)

「来て早々、大声で。少し場所を弁えなさい。」

 と、女の子は言うと、トラックの方へ歩いて行ってしまった。

 ただ、自分一人で馬鹿みたいに何か言っていたのではなく、一応は、女の子に伝わっていた。一応は。

 帰って来た返事というのは「場所を弁えろ」という想定外の物。

(ここの家の娘さんかな?にしても、挨拶一つ無いとは。しかも名乗らないとは。男手一つで育てられた俺だって、人として、挨拶と返事が出来ねえ奴は生きる資格は無いって親父に教わったぞ。)

 カイは憮然。

 だが、とりあえず、CT125を適当なところに止めた後、自分の荷物を降ろすのを手伝う娘を見て、(悪い奴ではないかもな。)とも思いながら、自分もそれに加わろうとする。

「ああ。来たか。」

 と言う声に振り向くと、汽車見タキの姿があった。

「タキ。この子が例の子であっている?」

 と、娘が言う。

「ええ。」

「私の遠い親戚ねぇ。会ったことも無いのに。母さんは何を考えて―。」

 溜め息を吐く娘。

 もう、見ればわかる。

 カイは歓迎されてない。

 無理もない。どこのどいつか分からない奴が転がり込んで来たのだ。

 歓迎ムードを求める方がおかしいというのだ。

 だが、カイはそれでも、萎縮せず、堂々と胸を張りながら、自分の荷物を降ろすのを手伝うのだが、それが終わった途端、娘は、

「後はタキに聞いて。」

 と、無表情で言い、自分の部屋へ向かって行ってしまった。



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