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三宅町の赤いカブ  作者: Elena
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二ノ山登山・第2部

「ガガガガガッ!」と、空転する駆動輪。

「ちっ!」

 舌打ちしたカイ。2速から1速へ落とすも、動かない。スタックしている。

「-。クソがっ!」

 駆動輪の足元にハンカチを投下。強引に抜け出ると、ハンカチを回収。

 それは、父が、カイの母から貰った物だった。

 ヘルメットの中で目を一瞬瞑ると、父を思い出した。

「俺は、お前にとっては無駄な存在だ。俺がいくら何を言おうと、無駄だ。お前が何かを決める時、俺は、助言は出来るが、決めるのはお前なんだ。」

 と、父は死に際に言った。

(親父。居るなら助けてくれ。)

 心のどこかで、父を思う。

(分かっている。親父が死んだ後、どこでどう生きるかを決めて、ここに来たんだ。そして、こんなところを、親父のバイクで走って、苦しんでいる。親父。頼むから、見ているのなら、引っ張ってくれよ。畜生!)

「バコッ!」と、大きな反動。岩に前輪がぶつかって、ハンドルが取られる。

 バランスを崩す。

「ガァン!」と、衝撃が頭に来る。

(痛ってて。)

 と、ヘルメットに触れると、ヘルメットに小さな傷が付いたようだ。

 グローブに砂が付着。

 しかし、

「ありがとよ。親父。助かったぜ。」 

 と言うと、再び走り始める。

 しかし、またも空転する特有の音が響き、そうかと思うと駆動輪が泥濘に捉われた。

「-。クソッ。」

 ハンターカブを降りて押し上げると、そのまま押し掛けの要領で跨る。そして、そのままの勢いで、目の前の砂礫に突入する。

 僅かに見える、タイヤの轍を頼りに、砂礫を突破して、今度は岩盤の上を走ると、クレバスが口を開けていた。

「-!これは、あっ!」

 と、カイは何かを見つけた。

 クレバスを渡る、細い木の板。ここを、バイクが渡った跡がある。

「デェイ!」

 と、木を渡って更に前へ進んでいく。

 木の合間から見ると、かなり登って来ているようだった。

 だが今度は、目の前の勾配が急激に角度を増す。

 基本2速で登り、時に1速も使って来たのだが、遂に1速をメインに使うようになった。

 聞いたことが無いほどに唸りを上げるハンターカブ。

 エンジンから火を噴きそうになる。

(頑張れ。)

 と、歯を食いしばる。

 目の前を何かが動いた。

 どうやら、鹿のようだった。

 鹿の群れが、ハンターカブの音に驚いて逃げたようだった。

(動物が逃げる?そもそも、動物と出くわすなんて。筑波サーキットの養成所に行ったとき、狸のような小動物に遭遇したことはあるが、鹿は初めてだ。熊や猪も出て来るのかもしれんぞ。)

 カイ。今度は、動物に遭遇する恐怖や、最悪の場合、動物に衝突したり、襲われたりと言う恐怖が襲って来た。

 そして、目の前に崖だ。

「うわぁ!」

 と、急ブレーキをかけるとそこは、外輪山の淵。ここから、山頂カルデラに降りて行くようだった。

 そして、簡易コンクリート舗装の道が続いており、ここからは、ゆっくり降りられるようだった。


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