帰りの列車
DD51が35系客車を牽引するこの列車は、JR線からの接続もあり、5両の客車はほぼ満席。ボックスシートに空席は無い。
アカネは、カイを見付けると、カイの座るボックスシートに座った。
カイはそれに気付いていたが、知らぬふりをする。
タイヤを抱えるカイは、とりあえず、中破こそしたが、スペアパーツで修理出来る範囲で最低限の修理が出来る事状態で終わった事を幸運に思ったが、自分のハンターカブの象徴にして、父の形見でもある郵便ボックスは修復不可能になっていることに、(どうしてくれようか。)と悩む。
アカネは何か言おうとするが、何と言えばいいのだろうか分からぬ様子。
「ガタンガタン」と、列車に揺られ、進行方向左側にトンネル工事により出来た滝を見る。
「バイク、事故ったの?」
と、アカネが切り出した。
カイは車窓を見ながら「うん」と頷いた。
「私の水、汲もうとして?」
「-。」
「私の、せいでもある?」
アカネは声のトーンが普段よりも低い。
「どうだか。」
と、カイは返事。
これには、カイの慢心による部分もあるかもしれない。
結局、その後は話す事も無く、小熊駅に降り立つ。
小熊駅から二人並んで、赤金の家まで歩いて帰ると、タキと美月の姿。
カイは門を潜ると、自分のCT125ハンターカブに向かい、タイヤの組み込み作業に取り掛かる。
「-。なにか、手伝わせて。」
と、アカネが後ろから言う。
「えっ?」
と、美月が驚く。
「アカネ。持って行ったポリタンクは―。」
タキは、アカネが家を出た時に持っていたポリタンクが無い事に気付いた。
「事故に遭ったって話を聞いた。二ノ山で。立ち聞きみたいな恰好で、聞いていたんだけど―。」
タイヤを組み込む手を止めること無く、カイは「ああ、あの時、電話あった時か。」と言った。
「ああ。事故った。アカネの水を汲みに行った時だ。登りでも、下りでも。止めの一撃は強烈だった。それで、郵便ボックスを壊した。妙に悪運は良いのか、エンジンやフレームは無事だったし、タイヤはパンク修理材入れて何とか、帰って来たけどね。」
言いながら、フロントタイヤの組み込みを終えると、リアタイヤの組み込みを試みたが、もうすぐ夕食だった。
タキが、風呂を沸かすと言い、美月は夕食を作りにかかる。
だが、アカネはどうすることも出来ず、カイは、夕食までのギリギリの時間で出来る修理作業は無いかと考えるが、考えている間に、夕食になった。




