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三宅町の赤いカブ  作者: Elena
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アカネの後悔

 キハ40系気動車で編成された三宅町鉄道の列車と、バスを乗り継ぎ、二ノ山の登山口まで行き、ロープウェイで二ノ山を登って行く。

 山頂駅から、歩いて20分から30分程度の場所にある、黒部山の湧き水。

 既に、カイが余計な事をしたために、自分で汲みに行ったという価値が半減したと思う。

 ワンスパン式ロープウェイに乗って、山を登っていると、下に見える登山道路を、カイのようなバイクで登って行く奴等が見える。

「何が楽しいのか。」と、アカネは鼻で笑う。

 そのバイクの中に、見覚えのあるバイク。カイと絡んでいた奴のバイクだった。

(ダークグリーンで、自衛隊で使っているバイク?)

 と、アカネは思う。

 ロープウェイの山頂駅に着く。ここから、登山歩道を歩いて、黒部山の湧き水まで行く。7つの峰を持つ二ノ山の最高峰、標高1828mの黒部山。この黒部山の湧き水は、山頂カルデラの二ノ山大沼に注ぐ黒川の水源だ。不思議な事に、二ノ山大沼には湖尻はあっても、そこから流れる川は無い。いや、かつてはあったが、ある理由で、大沼の水深が5m浅くなったのだ。

「ダイナマイトドカーン。なんて、あいつは軽く言っていた。面白半分のつもりか。そのせいで、川が一本、消滅したのよ。」

 と、アカネは言いながら、登山道を歩く。

 バイパストンネル工事の際、破砕帯を爆破して鉄砲水が発生した。その鉄砲水は何処から来たのか?ここ、二ノ山大沼だ。

 破砕帯を爆破した。その際、爆破の衝撃で岩盤にヒビが入って、それが二ノ山大沼まで達し、水がそこを通ってトンネルから一気に流れ出た。そして、今もヒビがトンネルの役割になってしまって、そこから水が漏れ、バイパストンネルから滝になって流れ出ているのだ。そして、そのために、二ノ山大沼の水深が浅くなって、本来の湖尻から流れ出ていた二ノ山川の流れ口に水深が届かなくなって、二ノ山川が枯れたのだ。

 自分の祖父母の暴走。それは、人間が自然の法則に抗おうとしたらどうなるのかを、その身をもって示した。

 二ノ山川の消滅で、二ノ山川流域の農作地域は壊滅。二ノ山川は、流域こそ小さいながら、その流域に位置する尾怒田町は、農作で成り立つ町だった。が、農業用水が二ノ山川の物。故に、川の消滅は、町の消滅。尾怒田町からは人が消えて、残っているのは、廃墟だけだ。

(私は、人間が嫌い。でも、カイは―。)

 アカネ、自分の感情が分からない。

 黒部山の湧き水に到着。

 すると、そこに誰かが居た。

 バイクが1台。

 クラスメイトの大間々だった。

「ふーっ」と、大間々は言いながら、湧き水をマグカップに入れて飲んでいた。

「バババババ」と、別のバイク。

 それは、同じくクラスメイトの神梅だった。

 見つからぬよう、アカネは木陰に隠れる。

「いやぁ疲れた。でも、楽しい。」

 と、神梅の声。

「カイの奴、来るのかな?」

 大間々。

「来て欲しい。みんなでさ、ツーリングしたら楽しいじゃん。せっかく、仲間が増えたんだから。」

「二ノ山の湧き水を飲むの、楽しみにしているようだ。100均でポリタンク買うとか言ってさ。おまけに、郵便ボックスも、いろいろ弄っていたし。」

「なら、ここを紹介してあげよ。」

「ああ。きっと根利も、そのつもりだ。」

「二ノ山の事聞いていたし、そうだ。」

 と、神梅はスマホを引っ張り出している。

「えっ?」

 神梅が声を曇らせる。

「噓でしょ?えっ登ろうとして転んで―。えっ、エンジンとフレームは無事。でも、タイヤと―。嘘!?そんな―。あの―。えっと―。えっ―。うん。分かった。根利にも、言っておくから。」

 電話を切った神梅。

「どうしたんだ?」

「カイが事故った。」

「えっ?ケガは?」

「全身擦り傷だらけ。それから、ハンターカブが―。」

「どこだ?どこで事故った!?」

「二ノ山。理由は分からないけど、ここに来ようとして、落ちたって。」

「なっなんで―。下見か?」

「そう言っていたけど、どうも違うように聞こえたのよ。」

 神梅が言った時、アカネは逃げ出した。ポリタンクを放り出して、逃げ出した。


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