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三宅町の赤いカブ  作者: Elena
28/55

またの日常

 筑波サーキットに行ったその翌日。

 アカネは以前に増して、カイに冷たく接するようになった。

 まして、目も合わせようとしない。

 クラスのバイク好きの中の一人がアカネに話しかけようとするも、「話しかけるな」と言う雰囲気に圧倒されてしまう。

 今日の昼休みもまた、バイク好き同士で昼食なのだが、雨が降り出したので、教室で食べる。

「筑波サーキットを走る郵便バイク。シュールだけど、絵になったね。」

 と、根利は言いながら、GoProで撮影した筑波サーキットの映像を見せる。

「実は、サーキットはあれが初めてだったからさ。周りをキョロキョロ見ちまったよ。」

 カイは頭を掻く。

「筑波サーキットから筑波山に足を延ばしたいってのは、筑波サーキットに始めて来た人あるあるだよ。でも、オートレース養成所来た時に行かなかったの?」

「行かなかったな。余裕無かったし―。」

 と、カイは言う。

「でも、気持ちは分かる。俺と同じく、オフロードバイクだしな。」

 大間々が言った。

「群馬の東吾妻の方の山の中じゃ、CT125の郵便バイクが本当に走っていて、凄い山道や雪の山道を集落まで登って来るって。私の兄貴、東吾妻でS660乗り回しているんだけど、郵便バイクが雪の峠道を働いている温泉まで登って来た時には驚いたって言っていたよ。」

 相生も言った。

「なぁ、近いうち、二ノ山ツーリングやらね?」

 と、大間々が言う。

「二ノ山って、三宅町と白上の合間にある急峻な山だよな。確か、バイパストンネル作ろうとしてダイナマイト爆破して、鉄砲水がドカーンってなった。」

「その二ノ山は、バイクで登れる道があって、偶にその道攻めてんの。神梅と一緒に。」

 大間々が言うのに神梅も頷いた。

「私のカブでも登れるから、物足りないかもしれないけど。」

 と、神梅。

「って言うか、この前は5人で一緒に上ったし。」

 黒保根は言いながら、その時の写真を見せる。

「ふーん。」

 と、カイ。

「興味あるね!なら、みんな予定が無い日って言うか、来週の土曜日は空けとけよ!さすがに、今週の土曜日はね―。」

 相変わらず、アクセル全開娘の根利。

 5人はそのつもりだったのだが、カイはまたも、根利のペースに巻き込まれる格好で、二ノ山登山ツーリングに参加させられることになった。

 今日は放課後、単発バイトが入っているカイは、同じく単発バイトがある黒保根と相生と一緒に、バイトへ向かおうとする。

「うわっ。」

 と、黒保根が言う。

 何か指すので見てみると、アカネがまた、カイを睨みつけていた。

(なんだろう。筑波サーキットに行ってから、更に冷たさが増したような。何かしたのかな?)

 と、カイは考えるが「行こ。気持ち悪い。」と相生がバイクを発進させ、黒保根も続く。カイも慌てて、CT125を発進させようとして「おっとっと」と転けそうになった。

「おいおい。立ち転けすんなよ。」

 根利は言いながら、見送る。

「あの―。」

 と、根利に話しかけられる声。

 それは、今まで根利が話したことのない、赤金アカネ。

「何か用?」

 根利はヘルメットの中で言う。

「えっと―その、私、見たのよ。悪いとは思ったけど。」

(何を?)と聞こうとしたが、筑波サーキットに来ていた事を知っている根利は自分のレースの様子や、スタンド席でカイと話す様子を見られていた事を思い出す。

「ああぁ。」

「あの、なんて告白してきたの?」

 と、アカネが唐突に聞くので「えっ?」と聞き返す。

「筑波サーキットで、告白したでしょう?水沼君。」

「なっ何の話?」

「レースの後。」

「ああ。あれか。あれは違うよ。筑波山に寄り道したいって言うから「無理。ここから25キロある。帰れなくなる。」って言ったのよ。」

「ええっ。」

 アカネは驚く。

「っていうか、そこまで見ていたんだ。」

 根利も驚いた。

 そして、

「ところで、なんでそんな事聞いたの?」

 と、逆に聞き返す。

「いやっ。あの―」

 アカネは予想外の回答に、なんて答えるか分からず、

「いや、お邪魔しました!」

 と言って、駅へ向かって駆けて行った。


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