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三宅町の赤いカブ  作者: Elena
27/55

体験走行

 今、チェッカーフラッグが振られた。

 15番グリッドからスタートし、結局のところ15位でチェッカーを受けた根利。しかし、走り切れた事に満足していた。

 この後は、別クラスのレースが行われた後、カイ達全員が先導車に引っ張られる形でサーキットをクルーズ走行する体験走行。しかし、時間が時間なだけに、参加者は少なく、参加するのは事前予約をしていたカイ達6人だけだった。

 日産フェアレディZのセーフティーカーに先導され、コース2000を5周する。高速走行ではないが、カイにとっては初めてのサーキット走行なのだが、コースに入る際、「どうせなら」と、先導車の後。つまり一番前で走る事になった。

 ピットロードに出た時、メインスタンドを見ると、まだ帰っていないらしき赤金親子が見ていた。

 そして、一瞬後を見ると根利がヘルメットの横に着いたGo Proの電源を入れて「フフっ」と微笑んでいた。

 信号が青に変わり、先導車に続いてコースインする。

(オートレースのオーバルコースしか知らなかった俺にとって、ロードコースは広い。世界が広い。)

 1コーナーを抜けてS字に入った時、カイは思った。

 1ヘアに入る。

 思い切りバイクを横にして抜ける。

 80Rを抜け、2ヘア。そして、裏ストレートを駆け抜けると、最終コーナー。

 ロードコースの中ではかなりコンパクトにまとまった筑波サーキット。

 だが、低速な体験走行でも、ロードコースが初めてのカイには広大に感じた。

 次の周回で、少し速度を上げる。

 1周目の平均速度は50キロ程度だったのが、60キロ程度まで加速。1ヘアを立ち上がり、ダンロップブリッジまでの間の加速。前方に見える筑波山を見て、(このまま、筑波山まで駆け抜けていきたい。)と思ったカイ。根利にお願いして、筑波山に寄ってから帰ろうかとも考える程。

 裏ストレートから最終コーナーを60キロ程度で駆け抜ける様は、筑波山から吹き降ろして来る風になったようだった。しかし、カイと神梅のカブは最高速度60キロが限界。これ以上は速く走れない。

 それでも、郵便ボックスを載せ、郵便バイクの姿そのものであるCT125が筑波サーキットを走っている。体験走行ながらも、カイはその時、死んだ父親の背中を見た気がした。

 その姿を、赤金アカネは何とも思わず見ていた。

「もういい。帰ろ。母さん。」

 と、アカネ。

「まぁまぁ。もう少し見ておこうや。ファザコンって揶揄するカイが、体験走行を終えてどんな顔をするのかをね。」

「興味ない。」

「私は興味ある。タキのお相手の息子が、何を見たのかをね。」

「それを私に見せてどうするのよ?」

「見せてから考える。」

「意味不明。」

 体験走行を終えた6台のバイクが、メインストレートに戻って来た。

 カイのCT125が、一番前のグリッドに止まる。

 その状態で記念撮影をして貰い、ピットに戻って行く。

 戻り際、カイは隣のグリッドに居た根利に何か言うのだが、根利が首を横に振って何か言うと、カイはそれにがっくりしている。

「あーりゃま。」

 と、美月は笑う。

(バカじゃないの?ここで告白するなんて。)

 と、アカネも鼻で笑う。

「慰めてやるか。」

「さぁ。勝手に自慰でもしていろっつーの。」

 美月はニヤリと笑って言うが、アカネは一蹴する。

 そして、赤金親子は先に、カムリで出発する。それから数十分後、カイ達が筑波サーキットを後にする。

(意外だなぁ。ここから筑波山って、遠いんだな。筑波山神社の鳥居が見えたから、近いのかなって思ったんで、根利に「筑波山まで寄り道したい」って言ったんだけど、まさかここから25キロあるとはなぁ。)

 と、カイは思いながら、筑波サーキットを後にする。

 同じ事を根利も思って、初めて筑波サーキットに来た時に筑波山まで足を延ばしたらかなり離れていて、三宅町に帰ったのは深夜0時を回ってしまったと言う。

(でも、来てよかったな。筑波サーキット。)

 と、カイはミラー越しに、後方へ離れて行く筑波サーキットを見ながら思った。


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