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三宅町の赤いカブ  作者: Elena
26/55

告白・そしてレースへ

「いってらっしゃい」と、レースに出て行く根利を見送るカイ。

「うん。行ってくる。」

 根利は不愛想に頷いた。

「さっきは、何の話してたん?」

 と、神梅が聞く。

「なんでもないよ。」

 誤魔化すカイ。

 サインティングラップを終え、グリッドに着く根利。

 スターティンググリッドはかなり後方15番グリッド。

 初のレース故に、これは仕方がないかもしれない。

 まして、現役高校生がスポット参戦でもレースに出ると言うだけでも凄い事。

 なので、場内放送でも「異端児」と言われている。が、カイにとって、高校生の年齢というのはオートレース養成所の入所要件を満たす年齢であり、卒業したらそのままオートレーサーとしてデビューするのだから、高校生のレーサーがいてもなんら不思議に感じない。

 スタートまでの短い時間、ピットクルーもコース内に入ってライダーと話す事が出来る。なので、根利はその中にカイを見付けると、「ちょっと来て」とジェスチャーする。

「どうしても、本当の事を言えないのならそれでいい。でも、仲間として私はカイを見ているだけに、残念にも思う。」

 と、ヘルメット越しに、カイの耳元で言った。その声は暗く低い。

「15番グリッドゼッケン660!根利-」

 と呼ばれるも、根利はなんのリアクションもしない。

 カイは「実は―」と言いかけたがその時、大間々と黒保根に「早く出ろ!」と抱え込まれてコース外へ引っ張り出される。スタート前のウォームアップラップ開始3分前で、ピットクルー1人を残し、他のクルーはコース外に退避だ。

 だが、根利は「カイを残して」と言った。

「えっ?」

「いいから。残して。」

「-。分かった。」

 と、大間々。大間々はカイを放す時「上手くやれ」と耳打ちしたが、その意味が分からない。

「二人きりよ。」

 と、根利。

「怒らないで、っていうか、驚かないで聞いて欲しい根利。実は俺、さっき嘘言った。」

「うん。そうだろうね。」

 根利は暗い声。いつものアクセル全開娘ではない。

 カイは声を震わせながらも、(やっぱり言わなきゃだめだよな。)と思い、心を決めて行った。

「俺、実は居候している。赤金の家に。」

 根利はヘルメットの中でどんな顔をしているのか分からなかった。

 だが、驚いていることは間違いないだろう。

「死んだ親父の伝手らしい。どうも、親父と赤金の家の遣いがその―」

「分かった。話してくれてありがとう。」

 カイはこれで、根利からは腫物を扱う目で見られるのだろうと思った。

 だが、根利はカイの方を見て顔を寄せる。

「そんな深刻な顔しないで。言ったでしょ?変な目で見ないって。大丈夫。私とカイの秘密にするから。それにさ、仲間を信じなきゃ、バイク乗りは務まらないんだから。私が怒ってたのは、カイが私の事信じてくれてないから。信じないで、嘘言うから。私が仲間って思っているのに、何その態度って思ったから。」

「仲間-。」

「そっ。カイはどう思っているのか知らないけど、私はそう思う。だってカイは今日、筑波サーキットまで一緒に来てくれたから。今までだって、私達と一緒に学校で飯食ったり、遊んだりしていた。私にとっては、大切なバイク仲間よ。」

 カイは改めて、根利の顔を見ると、根利はヘルメットの中で笑っていた。

 スタート1分前を告げられる。

「さっスタンドを下ろして。カイも退避よ。」

 と、根利。カイがスタンドを下ろすと、根利はエンジンをかけた。

 退避する際、カイは根利に、

「いってらっしゃい。」

 と声をかける。

「うん。行ってくるね。」

 と、根利は頷いた。

 ウォームアップラップに出て行った根利。ここでスタート練習もしている。

 そして、またグリッドに戻って来た。

 シグナル注目。レッド点灯。今、ブラックアウト。

 全車一斉にスタートを切る。根利は、一回ウィリーしてしまったが、そのまま加速して行き、1コーナーへの上り坂を一気に登ると、1コーナーへ消えて行った。


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