レーサー根利
予選に出て行った根利は、ひたすらにタイムアタックをしていく。
予選は20分間。
その間に出たベストタイムを基準に、スターティンググリッドが決まる。
カイは筑波サーキットのオートレース養成所には来ていたが、コース2000には入った事は無い。
ピットの屋根上からコースを見ると、根利のCBR250Fが最終コーナーを立ち上がって、メインストレートを駆け抜けていくのが見えた。そして、1コーナーに飛び込んでいく。カイは身体を捻って、根利を追う。
S字を抜けて1ヘアに飛び込んで行く様を見ていたのだが―。
「ちっ!」
と、カイは舌打ち。
「なんでここに居るのか、気になったかね。」
赤金美月は「フフっ」と笑った。
「まぁ、私が連れて来た。って言うべきだろうね。」
「あの、実は自分。赤金の家に住んでいる事は、内緒にしているのです。」
「なぜ?なら、ここで言えばいいのでは?」
「それがその―。」
実の母の前で、娘がクラスメイトから虐げられるような目で見られていて、そいつと一緒に住んでいると言ったら、また人間関係が壊れるのではと恐れていた。なので、内緒にして欲しいと強く言った。
「おーい!」
と、ピットレーンから大間々が呼ぶ。
「ピットインするってさ!調整したらまた出るってよ!降りて来い!」
「今行く!」
と答え、階段から16番ピットに降りた。
そこへ、根利のバイクが戻って来た。
マシンセッティングをこなしてまた出て行く。
が、何も出来ずのカイ。何をすることも出来ずだったカイ。しかし、
「いってらっしゃい」と一言、根利に言う。
「行ってきます。」
根利は頷いた。
「今の俺には、無事を祈る声をかけてあげる事しか出来ない。」
と、ピットロードを出て行く根利の背中を見て歯を食い縛って言った。




