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三宅町の赤いカブ  作者: Elena
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筑波サーキット

 根利の出場するレースは、2つある筑波サーキットのコースの中で、大きい方。コース2000で行われる。

 そして、レースの後、サーキットを先導車に続いて体験走行するイベントに、カイも参加する。と言うより、させられてしまった。

 根利は、別ルートで筑波サーキットに来た、世話になっているショップの人のトラックや、神梅のカブに積んで貰っていた機材を引っ張り出してそれを身に着けていく。大間々も、HRC CBR250Fをサーキット走行に向けて用意する。

 同じくサーキットを舞台に戦っていたカイの父の姿を知っているが、そこはオートレースの行われるオーバルコース。車両も、ミラーもブレーキも無く、ハンドルも左が高くなっている、オートレースバイク。

 一方、今、目の前で根利が乗っているのは、つい先ほどまで公道を走っていたバイクなのだが、サーキット走行に向けて準備を進めている。

 ライトにテーピング。ミラーを外す。

 モータースポーツの事は知っていたはずだったが、オートレースにだけ特化していただけに、今、目の前で行われていることは全てが初めて見る物だった。

「どうよ?」

 と、着替えて来た根利。白いツナギを着て戦闘モードだった。

「まずは予選よ。」

 根利は言う。

「頑張れよ!」

 大間々を始め、皆が声援を送る。

 カイも「えーっと」と目を泳がせながら、「いってらっしゃい」と言った。

「うん。行ってくる。」

「いってらっしゃい」と言ったのはカイだけ。根利はそれに「行ってきます」と答えた。

「君は、サーキット初めて?」

 と、根利が世話になっているショップの人が言う。

「えっええ。」

「サーキットを走る事。そして、普段走る事。どっちにも言える、一番大切な事って何だと思う?」

「-?」

「無事に帰って来る事だよ。レースでも同じで、結果はどうでもいい。大切なのは、無事に終える事だ。君は、サーキットを走ってみたい?」

「-。走れるのなら。」

「なら、まずは無事に帰る事。これを完遂し、普段の生活、日常の行いもしっかりすること。それがまともに出来ないと、サーキットを走る事は出来ない。なぜなら、サーキットで走るってことは、非日常の世界で非日常の事をするってこと。非日常の事をするのに、日常生活がまともに出来なければ、まともに走る事は出来ない。」

 かつて、父に言われた「型を破りたいなら、型を作れ」と言う事を思い出したカイ。

 ピットロードからコースへ入って行く根利のバイクを見送る。

(今、俺は「型」を作れているのかな?)

 と、根利の背中を見ながら思うと、根利の事が輝いて見えてしまった。


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