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三宅町の赤いカブ  作者: Elena
19/55

アカネの母

 リビングへ向かう。

「筑波に行くとか話していたね。」

 と、アカネの母は言う。

「えっええ。」

「アカネは誘わないのか?」

「それが、その―。」

 目を泳がせるカイ。バイク好きの奴等からは煙たがられる存在故に、誘ってどうなるか分からない。

「まぁいいさ。そのうちおいおいとね。とにかく、自分の気持ちに素直になるのがいい。」

 と、アカネの母は言う。

 リビングで夕食。

 だが、相変わらずアカネとカイは話すことは無い。

「帰り道は楽しかったか?」

 と、アカネの母が切り出す。

「えっ?」

「列車と競争していただろう?」

 と言われて、(見られていたのか)と思う。

「いや、明日の話題作りにって。」

 頭を掻く。

「嘘。これで二回目。まさか、二回も同じ事をして、話題になると思うの?」

 アカネが初めて口を開いた。

「それはまぁ、やってみないと分からないし―。」

 カイは言う。

「本当は、行きたくないのでしょう?筑波には。」

 痛いところを突かれた。黙り込むカイ。

「自分の気持ち、押し殺して、無理に付き合ってまで、筑波に行ってどうするの?」

 追い込むアカネ。

「さぁ。行ってみないと分からねえだろう。」

「他人に強制されるようにでも、行くの?」

「何が言いてえ?なら、あんたも着いて来いよ。」

(無理だけど。)と本音を隠す。やろうと思えば、カイのCT125は二人乗りが出来る。リアの郵便ボックスを外して、スペアパーツとして持ってきたタンデムシートを取り付ければOKだ。免許関係でも、問題は無い。

 だが、この物の道理も分からなそうな女一人のために、リアボックスを外してタンデムシートを取り付けてまで、そいつを乗せるだけの価値があるだろうか?

 散々、苦労した挙句、やれ「なんであんたを抱きしめる格好で乗らなければならないのさ」とかなんとか言ってくるに決まっている。そのために、周りの人まで嫌な思いをしたら、どんな顔をすればいいだろうか。

 それ以前に、アカネが筑波サーキットまで来るなんて誘いを受けるはずはない。なので、カイはその後のセリフに戸惑ってしまった。

「いいわよ。アンタの泣きべそ見てあげるわ。」

「はっ―」

「行くって言ってんの。」

「あっえっとその―。」

 逆に戸惑うカイ。

 しかし、アカネはその様子を見て、ニヤリと笑い、

「嘘よ。」

 と言い「がっかりした?」と言った。

「ほっとした。」

 と、カイは言い放った。

 だが、アカネの母、美月はその様子をニヤニヤしながら見ていた。

(こんな事を言うとは。アカネにとって大事件よ。)

 と、思った。


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