列車と並走
今日の放課後、カイは大間々と単発のバイトだ。
小さな町工場で、ラベル貼りのバイト。
3時間働いて、2880円の時給。その日のうちに現金で支払われる。
大間々の紹介で、週2~4程度で働き始めたカイ。
高校生の放課後のバイトの時給など、安い物だが、生きるために必死で働いていた浜松時代と比べると、楽しいし、やりがいも感じる。
それだけ、余裕が出来たということだろう。
浜松時代のバイトは、余裕が無かったから、やりがいを感じられなかったのだろう。
16時から19時まで働いて、大間々と別れて、白上地区への帰路に付いたカイは、前方に、旅客列車を見つけた。
JR線からの乗り換え客を受け入れるため、最大数まで客車を繋いだ、DD51が客車を牽引する普通列車だった。
「ニヤリ」と笑った。
日が沈んだ美奈川渓谷沿いの区間。
列車は車輪を軋ませながら進む。その横を、エンジン音を轟かせて、CT125を走らせるカイ。
DD51の次位、オハユニ61の真横に着いたら、そのままその位置で走る。
この位置からなら、先頭のDD51ディーゼル機関車の雄姿をじっくりと見られる。
ヘルメットには、トラブル防止のためのGoProカメラを付けている。
だが、カイは敢えて、意図的に視線をDD51に向ける。
DD51を撮影しているのだ。
(へへっ!楽しい!)
と、カイは思った。
それを、見られているとは知らずに。
踏切で、列車を先行させたが、すぐにまた追い付く。
そしてまた、同じ位置で列車と並んで走り、気が付いたら小熊駅まで来てしまった。
「あっいっけね。」
と、カイは赤金の家に向かった。
見られたとも知らずに。




