マナー
トン。
静かに、生ビールが運ばれてくる。ラジオからはお経がリピート再生されており、店内は絢爛豪華な飾りで彩られている。
「葬式みたいだな」
「お通夜だろ」
すると店員が俺たちのとなりに黙って立っていた。怒らせているのだろうか。いやしかしだ。そりゃそう思うだろう。
俺は愛想笑いを浮かべると店員も笑った。
怖い、怖い、怖い。
「たこわさで、ハハ」
店員は黙ったまま厨房へ向かう。
飲みが進んでくると、静かさがバーのような気分を感じさせ、自分にも酔ってきた。誰かにおごりたい気持ちに駆られてきた。
「居酒屋ってこういう飲み方もあるんだな」
次第に安酒を飲む日本のおっちゃんたちに同情の念がわいてきた。
「この時間、夜勤の人もいるんだよな」
「そうだな、徹夜のやつもいる」
今日部長の愚痴に付き合ってもらう予定でいた。しかし、こんな煌びやかな店で、友と酒を飲み交わしている自分は幸せだとつつくづく感じた。そうかこの店は。
「店員さん」
黙ってやってくる。
「この店は静かにすることで、内省させたいんでしょ。」
「隣の家のおばあちゃんの夜が早いいんです」
「引っ越しせい」