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前編 私は見つけてしまったの

 それは気まぐれで地上の様子を眺めていた時だった。

 熱心に神に対して祈りを捧げるその姿が美しいと思ってしまい、気が付いたら毎日のようにその人の事を眺めるようになっていた。

 ある日あの人は神様に向かってこう願ったのです。

 病に倒れた一人の娘を救って欲しいと。

 それは流行り病で、何もしなければ死に向かうだけのものだったけれども、私の奇跡の力をもってすれば簡単に癒すことが出来る病だった。

 毎日毎日、必死に願うあの人に、私は力を振るう事を決意した。

 それは自然の摂理に背き、天界に弓を引くような行為だったけれども、あの人の為ならそれでもかまわないと思った。

 そうして、私は禁を破った罰により、天界から追放されてしまった。

 それでも私はあの人を見守り続けて、あの人の願いをできうる限り叶えて行った。

 その代償に羽が黒く濁り、瞳が赤く染まり、道に反した証として悪魔の角が生えようとも、構わなかった。

 だって、私がそれに耐えるだけで、あの人の望みが叶うのだから、それでよかった。

 けれども、人は変わっていく。

 初めは片田舎の寂れた教会に住んでいたあの人は、次第に大きな教会に移っていき、今は都の中央の教会でどんどんと地位を上げて行った。

 奇跡を起こす偉人として崇められるあの人は、それでも神様に、私に対して祈りを欠かさないでいてくれるから、私は今の状態になんの文句もない。


「私の守護天使よ、今日も私に加護をお与えくださりありがとうございます。あなた様のおかげで私は今日も生きることが出来ております」


 ああ、その言葉だけで私は報われる。


「どうかお姿をお見せください」


 その言葉に思わずドキリとしてしまう。

 この人の想像している私の姿は、きっとかつての純白であった美しい私の姿。

 今の私の姿を見れば、きっとこの人は私に対して失望してしまうでしょう。

 その瞬間、キラリと光が降り注ぎ、あの人と目が合ってしまった。

 これは、罪を犯し続けている私への天罰なのでしょうか。

 目が合って驚いたように目を見開かれて口をわななかせる愛しい人の前から、全力で逃げ出してしまった。

 きっとあの人の想像の中の私と、今の私はかけ離れすぎているから。

 それ以来、私はあの人の目に映るような場所からあの人を見ることはしなくなってしまった。

 もしまた神様が私に天罰を下して、あの人の前に今の姿をさらすようなことになり、驚愕の視線が失望や憎しみの色に染まったのを見るのはきっと耐えられないから。

 あの人の視線から逃げている私の所に、古い友人が訪ねて来た。

 それは私が純白だったころに戻る為に必要な方法を教えてくれるために、神様が遣わしてくれたのだという。

 そして、それは私にとって甘美であまりにも苦しみをもたらすものだった。

 ああ、神様。

 あなたは堕天してしまった私をどこまでも許してはくださらないのですね。

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