ダイエット
空腹にイジメられる。
ダイエットとはハードなスポーツである。
空腹のまま生活するのは、激しい運動をしているのに等しい。
血液から油っぽさがなくなって行くような。体から油分が血液に染み出すような。血の中に砂糖が残っていない感じ。
油っこいものを食べた後のような、体調と気分。
両肩から力がなくなりガックリと落ちる。両肩にのしかかる重たい疲労感。
疲れた。
自分の中に沸き上がる怒りと憎しみ。それが外に向く。
「私が飢えているのは、仲間が食べ物を分け与えてくれないからだ」
と。
指先から砂糖が抜けて行く。
空腹とは走らずにマラソンをしているようなものだ。空腹とは最も激しい運動である。普通の生活がフルマラソンになる。マラソンで長距離走った後のような、吐く息になる。
体が冷えて、かき氷を食べたような頭痛がする。意識しないと分からないような弱い痛みだが、積もり積もって気を滅入らせる
お腹から力の元が、時々、支給される。お腹が空く? 内臓脂肪がエネルギーに変わって行く?
脳に蓄えられていた油が使われて消えていく感じ。
お腹が減って腹筋がひきつる感じ。
「みんな、私にゴハンくれない。私はイジメられている」と、みんなを恨む。虐待だ。周りの人間が全て私に対して悪意を持っているように感じる。弱っているから、つけこまれると警戒する。弱いから厳しく鍛えられると思い込む。
「自分のどこのなにが悪かったのだろう」と自分の悪いとこ探しを始める。
「食べれないのは自分が弱いからだ」
と、自分のどうしようもない悪性や、過去の失敗や未来の不安といった、どうしても今では解決できない案件を持ち出して、決して尽きない糧として、それを貪り喰って精神を鍛える。幸福の前の不幸を自分で用意し始める悪癖。
イライラとの戦い。
体が冷える。
お腹が空くと力が出ない。
力が入らないから、筋肉が緩む。肩凝りが取れる。エネルギー消費を抑えようと、体の力を抜こうとし始める。それが動きを阻害する。仕事にならない。体の正義が、体を動かさないこと。でも仕事しなくてはならない。心と体の激しい戦いが始まる。
潤いを損ない肺を守る防護膜がなくなったような気がする。
独特の体臭が漂い人を寄せ付けない。調べるとケトン臭というらしい。脂肪が燃える時に出る匂いという話だ。不機嫌で怖い顔をしているので尚更だ。辛い顔で周囲を嫌な気持ちにさせる。マナー違反だ。
味覚が恐ろしく鋭くなり、砂糖の入っていない麦茶でも甘く感じる。
指先までエネルギーの元が届かない感じ。
寝るためのカロリーが足りないのか、それとも空腹ゆえか、眠りが浅く夜何度も起きる。そうならないように夕食に適量炭水化物をとる。そうでないと、寝ながらマラソンをしているかのように、くたくたに疲れはてて朝起きれない。
空腹を感じるのではなく、空腹を理解すればいい。空腹に喰われるのではなく、空腹を喰えばいい。空腹によって起こる体の変化に注意し、その内容に集中すると、不思議と飢餓の感情に飲まれずに済む。
理性で捉えるものは、感性に捕らわれなくなる。
空腹って、有酸素運動だわ。
空腹は、細く長く生命を繋ぐ。ゆえに千切れ易いのだが。
腹筋が力を入れるのを止めるので、下腹がふくれる。体が脳の命令より強く筋肉に「力を入れるな」と命ずる。
体に水分を保持する脂肪がなくなって、ウイルスをやっつける水の膜がなくなる。
辛いことを乗り切るとは、美味しいものを食べて一晩ぐっすり眠るということである。ダイエットは、それが出来ない。
大雨が大地の表面を滑り、中に染み込まないように、水を大量に必要とするけど、すぐにオシッコになって体内にとどまらない。
つまり、なにが言いたいかと言うと、ダイエットは辛い。
2020年4月30日 誤字修正
タカの正体
「タカは子供だな」
パパの言葉にタカは憤慨し、反論した。
「ボクは子供じゃない!」
「子供じゃなかったらなんなの?」
パパの問いに、タカは「なに当たり前なことを聞いてるの? バカだなぁ」と言いたげな口調で、愚図を見るような目をして答えた。
「豪傑」
後日、似たような話しが出た。
「タカは子供だな」
「ボクは子供じゃない!」
「タカは子供じゃなかったらなんなの?」
パパの問いに、タカは、自慢気に鼻を鳴らし、胸を張って答えた。
「伝説」
パワーアップしてる!