精霊使いの親子 吸血鬼
ハルは悪いことをしてる人を見て、どう思う?
ん? やっちゃいけないことをする悪い人だって思うって?
うん、そうだね。
でも、チラっと、
「あの人が悪いことやってるなら自分も悪いことをやってもいいよね」
なんて思わないかい?
みんなやってることなら、悪いことでも、自分もやっていい。
そう思わないかい?
そして、悪いことをしていい思いをしたら、もっと悪いことをしようとしてしまわないかい?
そういうのをね?
『悪を見て、悪に見られて、悪になる』
って言うのさ。
元は『鬼を見て、鬼に見られて、鬼になる』だけどね。
吸血鬼と同じだね。
吸血鬼に血を吸われた人は、吸血鬼になってしまうのさ。
吸血鬼は恐ろしい魔物だけど、同時に弱点の多い魔物だから、知恵と勇気で立ち向かって、必ず、倒すのだぞ?
ここで、アドバイス。
殺すな、倒せ。
魔物と戦う途中で、自分まで魔物になってしまわないように注意してね。
悪と戦う時は、必ず、悪を見なくてはならないのだから。
悪いことをした人ってね、みんなから「不幸になって欲しい」って願われるようになるんだよ。
だって、悪いことをして幸せになったら、みんな悪いことをしようとするでしょう?
世の中が無茶苦茶になっちゃう。
だから、悪い人には罰を与えて「悪い人が確かに不幸になった」って、みんなに思ってもらう必要があるのさ。
こうやって、これ以上、吸血鬼を増やしてしまわないようにするのさ。
人は真似をする生き物だ。
人のマネをすることで、心をひとつにして力を合わせようとする、一人では生きていけない弱い生き物だ。
吸血鬼は、そんな人の弱みにつけこんで増える魔物なんだよ。
ん? 人のマネをするのは悪いことじゃないのだって?
う~ん、難しいなぁ。マネされると気を悪くする人が居るからね~。
じゃあ、パパが、
「ハルはハルのことをハルって呼んでいるんだね。マネしちゃ悪いから、パパはハルのことを、へもへもけもりんって呼ぶね」
って言ったらどうする?
ん? パパはハルのことがキライなのだって?
大好きだよ~、クックックッ。
はっはっはっ、泣くな泣くな。
こういうマネはね、普通のマネと区別されてて、『マネの振りをする』『マネ振る』『学ぶ』と呼ばれているよ。
みんなや昔の人と同じことーーーマネをするんだ。
そのことで、みんなと力を合わせたり、昔の人の力を借りることができるようになるんだよ。
それから、悪いことをする人とは逆に、良いことをする人は、周りの人達から「幸せになって欲しい」って思われることになるよ。
良いことをした人が幸せになったら、良いことをしようとする人が増えるからね。
こういうのを『徳』って言うんだよ。