第七話 南への使者
俺はいつものようにアランと一緒に農作業をしていた。
「シド、そろそろ村の男衆総出で森に行って魔獣を狩りに行くんだがお前も来るか?」
「危険を犯してまでわざわざ森に入って魔獣を狩るのか?」
俺は雑草を抜きながら疑問を口にする。
「ああ、魔獣は放置しておくと前の様に村を襲ったりするからな。襲われる前に数を減らしておかないといけないんだ」
「なるほどな、もちろん俺にも手伝わせてくれ」
アランが手を止めて休憩したので、俺も手を止めて話を続ける。
「そして、その魔獣狩りはいつやるんだ?」
「そうだなぁ、今日話が出たから一週間後くらいかな」
引き抜いた雑草を弄りながら、アランは軽く答える。
「そうか、それまでにいろいろ準備しないとな」
俺はそう言って食事の準備を始める。食事の準備といってもアランのお袋さんが用意してくれたパンと干し肉をアランに手渡して広場で食事をとるだけだが。
「かなり大掛かりの魔獣狩りになるからな。近隣の村とも連携する予定だ」
「ふむ、それなりの人数でやらないと森は広いから大変か」
俺とアランはその後もしばらく談笑をしながら村の中を散歩してした。
村の広場まで歩いていくとアランが村長に呼び止められる。
「アラン、少し村の者たちを集めてくれ。少し魔獣狩りについて話さねばならんことがあるのでな」
「わかったよ、親父。すぐに手が空いている奴らを呼んでくる。シドはここで待っててくれ」
アランはそう言って走っていった。
そのあと、しばらく経ったら村の者達が続々と広場に集まってきた。大方の村人が集まったところで村長が口を開いた。
「みんな、よく集まってくれた。今日は少し魔獣狩りについて話そうと思う。女衆は治療道具や保存食、男衆は武器と胸当てなどの防具を一週間後までに用意しておいてくれ」
村長は当日までに準備するものを伝えた後、さらに言葉を続ける。
「そして、今回の魔獣狩りは近隣の村々とも協力して行うため、それぞれの村に使者を送ることにする。それについて、誰が良いかみんなには考えてもらいたい」
村長が言い終わったら、村の者達はそれぞれ誰がいいか話始める。
「親父、どの村に使者を送るんだ?」
「そうだな、南の村と東の村にそれぞれ二人ずつ送ろうと思う」
アランの質問に村長が答えると、さらにアランは言葉を続ける。
「東の村はともかく、南の村は森の近くを通らないといけない。あそこは魔獣が頻発している、だから俺は南の村の使者には俺と魔獣の襲撃時に活躍したシドで行くのが良いと思う」
「確かに、一理あるな……」
アランの話に村の人たちは一定の納得をする。
「だが、村の者ではない俺が行っても大丈夫なのか?」
俺がアランにそう聞くと。
「大丈夫さ、村長の息子の俺と二人で行くわけだしな。それにシドは村の一員みたいなもんだろ!」
「確かにアランの言うことは正しい。南の村への使者はシドとアランにしよう」
村長がそう言った後、比較的道中が安全な東の村への使者も決まり、各村への使者は決定した。
こうして、俺とアランは南の村への魔獣狩りの協力を頼む使者を任された。