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ゲッテルデメルング  作者: R&Y
一章
49/77

第四十八話 迫る決戦の刻

更新が遅くなりすいません

これからも、更新していくのでよろしくお願いします

 ワルキューレからの忠告の後、リーレは怪我人を運ぶための台車を探していた。


 瓦礫と化した道を歩いていると爆心地の近くで、瓦礫をどかしているワルキューレを見つけた。


 リーレに気が付いたワルキューレが手を止めずに口を開く。


「ヴァルハラからの者を探しているのだ。 もともと今回私はあの二人の回収をのために来た」


 急に声を掛けられて少し驚くリーレを一瞥もせずに淡々と言葉を続ける。


「馬を探しているのか? 馬屋の戸は瓦礫に埋まっているが気配はある、生きているだろう。 台車は余波の届いていない民家にあるだろう」


「ワルキューレというのは人の心まで見透かせるのですね」


「当然だ、生命体としての格が違う」


 リーレの皮肉めいた一言を一笑に付す。


「それにしてもやはり貴様ら人間というのは浅慮だとは思わんか。 第二の獣を仕留めそこなった付けは貴様らに帰ってくることぐらいは分かるだろうに」


「ナイトメアについての責任は私が必ず全うする。 あなたに言われるまでもない」


 少し声色を強めそう言い捨てると、馬屋のほうに歩を進めた。


「そこまで言うのならもう何も言うまい。 ……………………だがこの付けは人間一人が負える程度の物ではないがな」


 


 

 その後、言われたとおりに馬屋から数匹の馬と壊れていない台車を見つけだすことができた。


 複雑ながらもワルキューレに心の中で感謝を述べ、即席の馬車として使えるようにする。


 怪我人を馬車に積み、西に向かう。


 怪我をした村長たちも途中で意識を取り戻すが、長距離を歩けそうもない。


 動けるリーレとワイズが荷車を引いていたが、年のせいもありワイズに疲れが見え始めた。


「ワイズさんこの先に水辺があります、そこは魔獣が寄り付かない場所です。 少しそこで休みましょう」


「しかしリーレ…………今は一刻を争う、少しでも早く西の者と対策を立てねばならぬ。 それに皆にも適切な処置をしなければならない」


「いや、リーレの言うとおりだ。 お前の傷も決して浅くはない、倒れてしまっては荷物が増えてしまう。 それに我々はだいぶ休んだ、あと水の一杯でも飲めば歩ける」


 荷車に乗っていたアルダの説得によってワイズは首を縦に振る。








『気が付いたか』


「ワルキューレ様、助けていただきありがとうございます」


 意識を取り戻したヴァルハラからの使者の一人の男が瓦礫に腰を掛けていたワルキューレに深々と頭を下げる。


『口上はいい、調査の報告を』


「ハッ、反応は恐らくニーズヘッグの物と思われます」


『他に報告は?』


「いいえ、以上ですが」


 ワルキューレが天に手をかざすと光が集まり剣を形どる。


 そしてその剣先を男に向ける。


「いったいどういうつもりだ!」


『貴様らの一派がシド様の巡礼の警備網に穴を空けたのは分かっている。 大方貴様らの真の目的はシド様の生死確認および捕縛だろう』


『貴様の行動はヴァルハラへの反逆行為、死をもって償え』


「待て、何でも! 何でもするから命だけは!」


『駄目だ』


 そういい放つと剣先が輝き、一瞬で男の首を刎ねる。


 落ちる視野の中、男が最後に見たのはすでに事切れている仲間の姿だった。


 首のない死体の懐から水晶体の神器を取り出し記録を見る。


 しばらくしてあらかたの記録を閲覧し終わると手に力を籠め神器を砕いた。


『使者二人は第一の獣の攻撃を受け死亡、その際に神器も消失  こんなところか』


 ワルキューレが輝き始める。


『ニーズヘッグ…………我々も備えるべきか…………』


 一際眩く輝き、収まった時にはすでにワルキューレの姿はなかった。




 



 水辺に着き、皆が水分補給を始めるがそこから少し離れたところにロズが茫然と立っている。


「ロズ、あなたもここまで歩き続けだったのです。 あともう少し歩かなければなりませんから少しでも水を飲んでください」


 リーレが水を汲んで近づくが声を掛けても反応がない。


 沈黙が少し続いた後ロズの口が開く。


「リーレ…………思い出したよ」


「ロズ!? それはまさか」


「あの…………七年前の夜、私は…………母を貫いたあの男を確かに見ていた…………あの男、ギャラルホルンを」


「あいつは母を殺した…………あんなに愛していた母を何の躊躇もなく…………そして私に言った、しょうがない、私に剣を向けて確かに言ったんだ」


「……………………………………………………………………………………………………………………どうして…………父さん」


「ロズ! 危なッ!!」


 叫び終わる前にリーレの体が宙を舞う。


 ハッとロズが顔を上げるといつの間にか自分を見下す白き獣、そして尾の薙ぎが眼前に迫る。


 瞬間痛みを伴う衝撃、一瞬の浮遊感の後ロズは水没した。


 必死で陸に上がるとそこには壊れた荷車とそこから立ち上がるリーレと村長たちの後ろ姿、その先には白き獣が一匹、また一匹と姿を現す。


「白き獣…………弱った我々を仕留めに来たか」


「ここは私が時間を稼ぎます、皆さんは何とかこの場から離脱を!!」


 リーレが剣を抜き駆け出し、それを合図に皆が行動を始める。


 ロズも剣を抜き、襲い来る白き獣に備える。


 大部分はリーレに向かったが一体がロズに向かってくる。


 ロズが先制攻撃を仕掛けるが、相手は悠々と躱し突進をかます。


 そのあともロズの攻撃は悉く躱され、逆にロズの回避や防御は成功しない。


「うそ…………こんな………………」


 中央の村での一件で心身ともにダメージを受け、いつものキレがまるでない剣を鼻で笑いながら躱しロズを押し倒す。


 ロズの泣き出しそうな顔に勝利を確信し顔を歪ませると敗者を喰らうべく口を大きく開け迫る。


 しかしその口がロズに届く前に魔獣は絶叫を上げのたうつ。


 そして魔獣に矢が降りそそぎとどめを刺した。


「ロズ、大丈夫か!」


 上からの声に何とか顔を向けると水辺付近に立っている木に登ったアルハン達がが即席の弓矢をもって太い枝に座っていた。


 リーレが引き付けていた魔獣も村長たちによる弓矢に手も足も出ずに倒れていく。


「皆さん、ありがとうございます。 さすがですね」


 リーレが感嘆の声を上げる。


「ああ、狩猟の腕が役に立ったな。 しかし白い魔獣に捕捉されたか…………急がねばならんようだ」


『いや、もう逃げ回る必要はない』


 森に声が響き、同時に温度が急激に上がる。


「飛び降りろ!」


 アルダが木から飛び降りながら叫ぶ。


 直後、上空が赤く染まりその赤が周辺の木々に一斉に燃え移る。


 その炎は一瞬で木を灰に変え風に舞う。


『殺ったのは2人、残り8人…………さすがの反応だ、そうでなくてはな』


 全員の視線は今最も出会いたくなかった存在に集まる。


 第一の獣、カリギュラがゆっくりと歩みを進めてくる。









 

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