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ゲッテルデメルング  作者: R&Y
一章
27/77

第二十六話 東の村での邂逅

サブタイトルを二十八話となっていたところを二十六話に修正しました。

 東の村に付いた俺達は、リーレの実家によることにした。


「確か昔リーレの家に行ったときは…………」


「アラン、本当に大丈夫か」


 アランの道案内に一抹の不安を感じながら俺とロズはアランの後を追っていた。


「こっちは違うし、あっちは行き止まりで…………あれ? どこだここ」


「アラン、まさか道に迷ったのか?」


「いや~すまん!」


 そして案の定、俺達はこの土地勘のない東の村で迷子になった。


「こんなことならオーグかリーレについて来てもらえばよかったな」


 ロズの愚痴を聞き流しながら歩いているとちょうど食事処を見つけた。


「とりあえずここに入って休もう。喉が渇いただろう」


「たしかに東の村だけでだいぶ歩いたな。いいかロズ」


「構わない。このまま手掛かり無く歩いていても着く気がしないしな」


 食事処に入り、席に座る。


「屋内の食事処は初めてだな。レーネにはなかった」


「まあレーネは結構最近できた村だからな、親父が立ち上げて大体30年くらいか。まあ東の村は少し事情が違うがな」


「事情?」


 俺の質問にアランが答えるために口を開く。


 食事処の扉が開く。


「フン、やはり辺境は埃っぽい。さっさと聖都に帰りたいものだ」


「そういいなさるな。この村は戦線に程よく近い。ここを万が一の中継地点とすれば戦を有利に運べよう」


「わかっているわ! 辺境の村は魔獣の侵攻を遅らせる壁でもあるしな。聖女様の命令でなければこいつらと商売などごめんだがな」


 入ってきた二人を見た瞬間、体が硬直する。


 アランが何か言っているようだがまったく耳に入ってこない。


 二人の服装に見覚えがあった。


 白を基調とした上下に青のマント。


 そのマントには大きな瞳が描かれている。


「ヴァルハラの……貴族……なぜここに」


「おい、聞いているのか。東の村は辺境で唯一あの神国ヴァルハラと交易がある村なんだ」


「……………………」


「おいシド、大丈夫か。顔が白いぞ!」


「…………何でもない、大丈夫だ」


「とても大丈夫には見えねえぞ!」


「大丈夫だって言っているだろ! …………少し外に行ってる」


「おい、シド!」


 アランの呼びかけを無視し外に出る。


 地べたに座り辺りを見回す。


 改めて見ると、東の村は俺が行ったことのある二つの村より整備されている感じがする。


 おそらくヴァルハラのおかげなんだろう。


 そんな風にヴァルハラに複雑な思いを巡らせていると、ふいに目の前を女性が通り過ぎる。


 俺はとっさにその女性に話しかけた。


「すいません、リーレって人の家を知りませんか?」





「すげーじゃねえか。よくリーレのお母さんが分かったな」


「ただ彼女がリーレと同じ青髪だったから声をかけただけだ。母親だとは知らなかった」


 俺の判断は正しかった。


 話しかけた女性はリーレの母親で、俺達は今リーレの実家に案内されてお茶をごちそうになっていた。


「だけどアランくんがお友達を連れてくるとは知らなかったわ。 わかっていればもう少し何か用意したんだけど」


「いや、こちらこそ急に訪ねてごめん。そういえばレイジさんはいないのか」


「ああ、あの人は今不在のオーグ村長の代わりに村長の仕事をしているわ」


 レイジとはリーレの父親のことらしい。


「あなた達二人はこの村は初めてかしら」


 リーレの母親が俺とロズに問いかけてきた。


「私は旅をしていたが中央寄りのこの村には来たことないな」


「俺も来たことはない」


「じゃあこの村の様子に驚いたでしょう。この村はヴァルハラの人が立ち寄ったりするの。その人達がいろいろなことを教えてくれて、街並みが少しヴァルハラ風になっているの」


 ヴァルハラの城から見下ろした街並みを思い出す。


 確かにこの村にその面影を感じる。


「ただいま」


 その後アランがリーレの母親と会話を弾ませていると、玄関の方から声がした。


「おかえりなさい、今日はリーレのお友達が来ているんですよ」


「友達? アランじゃないか。どうしたんだ」


「レイジさん、久しぶり。レイジさんって、今は村長の業務を任されているんだよな?」


「ああ、オーグがレーネに行っている間は任されている」


「実は俺達は親父の指示で村を回っているんだ。リーレでの戦いのことを伝えるために」


 アランはあの戦いのことを語りだした。


 統率個体ウロボロスのこと、オーグが大きな怪我を負ってしまったこと、リーレ達と協力して倒したこと。


 リ-レの両親はその話を静かに聞いていた。


「多少の報告は受けていたが、オーグは重傷か。リーレはいつごろ戻ってくるつもりかか知ってるか?」


「多分オーグが多少動けるようになったら一緒に帰ってくると思う」


「そうか。では村長代理として確かに報告を受けた。お疲れ様、今日は泊まっていくといい」


 レイジの厚意を受けた俺達は、どこか懐かしい味のする食事をご馳走され眠りにつく。


 次の朝、次の村は少し遠いとアランが言っていたので早めに出発した。


 村の大通りを歩いていると前方から昨日の二人組が歩いてくる。


「大丈夫か」


 昨日のことを心配してか、二人が声をかけてくる。


 少し早足になりながら二人組とすれ違う。


(まだ俺はヴァルハラと向き合えなかった。でももっと強くなって次こそは…………)


 こうして俺達は東の村を後にした。

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