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ゲッテルデメルング  作者: R&Y
一章
21/77

第二十話 超常の猛威

 攻撃が到達する寸前、ウロボロスの外皮が弾け飛ぶ。


 そして触手が第一、第三部隊を弾き飛ばす。


「おい! 聞いた話と違うぞ!」


 触手は以前戦った時より太くなっていた。


「こんなわずかな時間に進化したのか……」


「側面に人を回してください! このままでは触手に対処しきれません!」


「無理だ! こちらも人が足りない!」


 ウロボロスの変化に戦線が混乱する。


 混乱している戦場に太さ1メートルもあるかのような触手が叩きつけられる。


 その攻撃が弾かれる。


「ないものねだりしていないで、さっさと陣形を組みなおせ腑抜けども! 触手が太くなっただけだろうが!」


 そこには大斧を構えたオーグが立っていた。


「オーグ……」


「リーレ! シド! 俺に続け! ほかの奴らはできる限り触手を引き付けろ!」


 オーグの指示に俺たちは動き始める。


「まずは眼を狙う。一人一つだ」


 触手の攻撃をかわし眼前まで迫る。


「うおおお!」


 俺、リーレが眼に一撃入れる。


 そしてオーグが目の前で大斧を振りぬく。


  『 i(イス)    ýr(ソーン) 』


 しかしその大斧はウロボロスに向かうことなく地に落ちる。


「ぐあああ!」


 オーグの絶叫が響き渡る。


「どうした! オーグ!」


 暗くてここからではオーグの様子がわからない。


 ピカッ


 空に稲妻が走る。


 その光がウロボロスを照らす。


「なんだ……これは…………」


 誰かが呟く。


 そこにはウロボロスの周りに鋭利な棘のような、氷の造形物が存在していた。


 オーグはその一つに貫かれて、ぐったりとしていた。


 地面が氷に覆われていき、次々と氷の棘が現れてゆく。


「もはや側面には回れません。第三部隊は第一部隊と合流します!」


 合流できた第三部隊は俺を含めて五人にも満たなかった。


「ほかの奴らは?」


「あの氷に巻き込まれて……」


 あの一撃で半数以上が……。


「奴を誘導する。 第二部隊から奴を丸焼きにする準備が整ったと報告があった」


「第三部隊まだ戦えるか?」


 エルの問いの答えは決まっていた。


「当たり前だ」


「私も行けます」


 俺達の答えにエルが頷く。


「よし! まだ我々は負けてない!」


 


「リーレ、おそらく奴は奴を傷つけた俺達に攻撃を集中させてくる。俺達で誘導するぞ」


「わかりました。ではあなたたちは私たちの後方で援護をお願いします」


 俺たちはウロボロスの前に立つ。


 残った一つの眼が俺達に向く。


「グオオオオオ」


「速い!」


「氷の上を滑っているのか!」


 地面に氷を敷きながらその巨体で木々をなぎ倒し、俺達を潰そうと迫る。


 間一髪でかわすとすぐさま触手を地面に突き刺し急停止する。


「二手に分かれ奴の狙いを分散させるぞ」


「わかりました」


 二手に別れ様子を見ながら走る。


 どうやら俺に狙いを定めたようだ。


 奴の突進を避ける準備する。


 今回は余裕をもって躱した、はずだった。


 奴が広げた触手に当たり吹き飛ぶ。


 奴が追撃の準備をする。


「放て!」


 ウロボロスに火矢が降り注ぐ。


「立てシド! あと少しだ」


 アランの声が聞こえる。


 氷で火矢を防いでいるうちに全力で森を走ける。


 光が見えてきた。


 しかし奴も俺に向かってきている。


「いまだ! 横に飛べ!」


 声が聞こえてきた瞬間何とか横に転がる。


 俺の横をウロボロスがすごい速さで通過する。


 そして落下音が聞こえた。


「よく走ったな」


「お疲れ様です」


 先についていたリーレとアランが俺のもとに駆け寄る。


 二人に連れられ目的の場所を見る。


 そこには大きな穴が開いており中には落ちたウロボロスと木の枝、落ち葉、薪などが敷き詰められていた。


 自分たちが掘ったとはいえ村に匹敵する大きさの穴と、明らかになったウロボロスの全身を見て戦慄した。


 村ほどの穴をもってしても尻尾が穴に収まりきらず、穴の外にある。


「バカでかいやつだ。だがこれで終わりだ」


 アルダとアルハンの指示で第二部隊が松明を投げ込む。


 穴の中が燃え始め、ウロボロスの絶叫を発する。


「残念だが魔獣は第一部隊が討伐したから来ないぜ」


 アランの声が聞こえたのか徐々に叫び声が小さくなっていく。


 ここに集まっている全員が炎にまかれたウロボロスを見つめる。


『 i(イス)    ýr(ソーン)   』


 背筋が凍るのを感じた。


「な……みんな伏せろ!」


 光が消えた。


 厳密には穴の周りに設置していた松明は光を保っている。


 しかし穴でゴウゴウと燃えていた炎は一瞬で消滅した。


 そこには巨大な氷の塊が炎と入れ替わったかのように存在した。


 随分と気温が下がったように感じる。


 いつの間にか雨はあられになっていた。


 数人が様子を見るために氷に近づく。


「まて!」


 俺の静止に足を止める、が手遅れだった。


 氷を砕き、飛び出してきたウロボロスになすすべなく食われる。


「ウロボロス……なのか、あれは」


 触手は燃え尽きたのだろうか、確認できない。


 その正面に最後の赤い眼は確認できない。


 しかしその代わり氷の鎧をまとった魔獣がそこにいた。


「奴を穴から出すな! ここで決めなければならぬ」


 アルハンの指示でウロボロスに矢を射かけるが、氷の鎧によって弾かれる。


「くそ、これ以上どうすれば」


「私は加勢に行きます。シドさんは休んでいてください」


 リーレが駆け出し、続くようにアランもウロボロスのもとに向かう。


 戦況は最悪だ。


 今は何とか穴の中に押しとどめているが、這い出てくるのは時間の問題だ。


 俺達にはもはや打つ手も残っていない。


 とりあえずみんなの元へと、体に力を込めて立ち上がる。


 ウロボロスは体を振るい這い出ようとしている。


 もう眼がないはずなのに、随分と正確に攻撃を放っている。


(もしかしたら……)


 試す価値はありそうだ。


 その時ウロボロスが体を天高くに突き上げる。


 その巨体の半分以上を直立させたのだ。


 まさかの光景に唖然とするが、誰もが次の行動を予想できた。


「あいつ、たたきつける気か!」


 みんな奴の前から退避する。


 次の瞬間、大地が割れた。


 その衝撃は退避した人たちも吹き飛ばし、地面が割れ沈下したり上がってきたりとめちゃくちゃになっていた。


 ウロボロスがまた体を持ち上げ始めた。


 ほかの人は衝撃でふきとばされたダメージで動けそうもない。


 もう一度食らったら壊滅は必至だ。


 剣を取りウロボロスに駆けよる。


 しかし距離がありすぎる。


 諦めかけたとき、すごい速さで何かが俺を追い抜く。


 その影はウロボロスにたどり着くと、勢いそのまま人の丈はあろうかという長剣でウロボロスの腹部を刺し込む。


 ウロボロスはバランスを崩しその上半身が穴の中に倒れる。


「グラニ!? それにお前は……」


 突き刺した長剣を持ち赤髪をたなびかせながら振り返る。


「待たせたな、シド。さあ、こっからが正念場だぞ」


「ああ! まったく遅すぎるぜ、ロズ!」


 夜明けは近い

 

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