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ゲッテルデメルング  作者: R&Y
一章
20/77

第十九話 ウロボロス襲来

 雨の中、突如魔獣の吠え声が響き渡る。


 グゥオオオオオオオ!!!


 一匹や二匹ではない大量の魔獣の吠え声。


 俺は咄嗟に飛び起きリーレを呼ぶ。


「リーレ! 魔獣の大群が近いぞ!」


「分かっています。すぐに村の広間に行きましょう!」


 俺たちはすぐに支度をして家を出る。


「ん……。グラニがいないな……」


「魔獣の吠え声に反応したのでしょうか……」


 俺は周囲を見渡すがグラニは見えない。


「グラニを探しに行く……時間はないか……」


「グラニは賢いですから恐らく大事には至らないかと、それよりも今は魔獣の対処です」


「分かった、急ごう。...グラニ……無事でいてくれよ……」


 俺たちは村の広間に向かった。


「こんなにも接近されているなんて……」


「作戦は破綻したな……」


 広間には既に多くの人が集まっていた。


「うろたえても仕方あるまい。幸いこの村には戦力が集まっておる。ここで撃破するしかない」


 困惑している者たちをアルダ村長が落ち着かせる。


「俺たちが一番最後みたいだな」


「私たちの家は村のはずれですからね」


 俺たちも村の者たちと合流する。


「シドとリーレか、第三部隊はこっちだ!」


「アランか、予定より早いが体は大丈夫なのか?」


「ああ、もう平気さ。昨日の鍛錬も問題なかったからな」


 そう言ってアランは元気そうに肩を回す。


「大丈夫ならいいんだ」


「今回の戦いは厳しいものになるでしょう。お互い気を付けましょうね」


「「分かった!」」


 三人で話しているとオーグはやってくる。


「お前らこっちに来い! これより第三部隊の動き方を説明する!」


「分かった、今行くよ」


 俺が返事をしてもどこか不機嫌そうなオーグだが説明を開始する。


「第三部隊の行動は作戦と大方は変わらん。ウロボロスまでの道を魔獣を撃破しながら開くんだが、村の防衛に回る第二部隊の援護に一人送ることになった」


 第三部隊の面子の顔が曇る。


「ただでさえハードな第三部隊なのに第二部隊の援護まで加わるのか……」


「けど俺たちの村だ。仕方ないか……」


「うろたえるんじゃねえ! 要は魔獣を殺すんだ。最初と何も変わらねえぞ!」


 オーグは厳しい口調で味方を鼓舞する。


「アラン、お前は第二部隊の援護に回れ」


 オーグが近づいてアランに話しかける。


「なんでだ? 病み上がりだけど絶好調だぜ」


「それもあるが村長の息子が防衛に回ったほうが士気を維持できるだろうが……」


「そうか……。わかった」


 一通り準備が終わった広間では厳しい戦いになる……そんな雰囲気が立ち込めていた。


「村の防衛は任したぞ! アラン」


「レーネのことを頼みますよ」


「任せろ! シド、リーレ、今度こそ俺が守る」


 俺たち第三部隊は魔獣達の方に移動した。


 村の外に出るとそこには魔獣、魔獣、魔獣。


「多いな……。ざっと百匹以上はいそうだな……」


「そうですね。厳しい戦いになりそうですがこの為に三つの村が集まったんですから作戦通りにやりましょう」


「そうだな、やるしかないよな!」


 俺とリーレは互いに健闘を祈りそれぞれの配置についた。


「いくぞ! 第三部隊! ウロボロスまでの道を切り開け!!」


 オーグの号令を合図に魔獣の大群と第三部隊の戦闘が始まる。


 オーグを先頭に他の面子でそれをサポートしつつ道を広げる感じに突撃する。


「うらぁあああああああああああああ!!」


 オーグは怒号とともに大斧を振り回す。


 大斧で魔獣を吹き飛ばしながらオーグが前進する。


(なんていう馬鹿力だ……)


 俺も相当な腕力だと思っていたがオーグはその上をいく。


「遅れんじゃねえぞ! 俺が正面の魔獣を叩き伏せる。お前らは撃ち漏らしを狩れ!」


 そう言ってオーグはまた大斧を振り回す。


「俺も負けてらんねえな……」


 俺もオーグに負けじと魔獣に剣を突き出す。


 渾身の一撃を顔面に叩きこむ!


「オーグが正面を持ってくれるからやりやすいな……」


「シドもそう思うか。嫌な奴だと俺も思っていたけどあの姿を見て見直したよ」


 俺の独り言に近くにいた第三部隊の一人が反応する。


「あの突破力は辺境一かもしれないな」


「そうだね、オーグは実力で村長まで成り上がった人だからね。その片鱗を見たって感じだね」


 二人で喋りながら魔獣の相手をしているとオーグの怒声が響く。


「お前ら! 無駄口叩いてんじゃねえぞ!」


「すまない、オーグが凄まじいから驚いてな」


「お、おう……。とりあえず今は魔獣に集中しとけ。足元掬われるぞ」


 話した内容を伝えるとオーグは少し照れながらも注意にとどめた。


 それからも魔獣達を狩りながらウロボロスに向けて進む。


「ふぅー、大分魔獣を狩ったはずだがまだウロボロスには着かないか……」


 剣についた血潮を飛ばしながら呟く。


 既に魔獣の大群とぶつかってから三十分ほど経つ。


 流石のオーグの勢いも衰えが見え始める。


 周囲を軽く見渡すと皆一様に疲れが見える。


 足取りが重くなり始めた第三部隊の先頭にリーレが立つ。


「オーグ、少し下がりなさい。次は私が先頭に出ます」


「リーレか、お前なら大丈夫か……。任せたぞ」


 魔獣を切り捨てながら先頭を交代する。


「大丈夫なのか? リーレ」


「シドさん、私はロズより強いですよ?」


 心配して声をかけるとリーレが冗談交じりに返す。


「まあ、そう言うなら任せるが、俺も前に出る」


 そう言って俺は近くにいた魔獣を蹴り飛ばしリーレのすぐ後ろに移動する。


「心配するな。俺は体力には自信があるんだ」


 俺とリーレを先頭に第三部隊は再度ウロボロスに向けて突撃を開始した。


 リーレが目の前の五匹の魔獣の内の三匹を切り刻む。


 剣舞を舞うように。


 俺も遅れて一匹を叩き切り、もう一匹の顔面に剣を突き刺す。


 左側の敵をリーレが、右側の敵を俺が相手をする。


 切る。


 突く。


 薙ぐ。


 俺の動きにリーレが合わせてくれるため驚くほど戦いやすい。


「リーレ! 大きい方は俺がやる。左側の三匹は任せるぞ!」


「分かりました」


 俺は力が強い魔獣や図体がでかい魔獣を優先的に相手をする。


 リーレは素早い魔獣を優先的に相手をする。


 俺とリーレが先頭に立ち再び勢いづく。


 さらに十分ほど進むとウロボロスの巨体が見えた。


「見えたな……。オーグ、第一部隊に合図をしてくれ!」


「分かった、まだウロボロスに手を出すなよ!」


 そう言ってオーグは合図をする。


 周りの魔獣を狩りながら第一部隊の合流を待つ。


「今到着した! 第一部隊を率いるエルだ!」


「来たか! 第三部隊は第一部隊と合流してウロボロスを狩るぞ!」


 第一部隊が到着しオーグの指示により第三部隊は第一部隊に合流を果たした。


「第一部隊がウロボロスの正面を持つ。第三部隊は回り込んで攻撃をしてくれ! 行くぞ!!」


 エルの号令とともにウロボロスと戦闘が始まる。


「グギャァアアアアアアアア!!!!」


 ウロボロスに第一、第三部隊が切りかかる。


 雨脚が強まる中、戦いは続く。




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