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ゲッテルデメルング  作者: R&Y
一章
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第十一話 シドとアラン

 ロズに協力を取り付けた俺たちは村長が用意してくれた宿に向かった。


「それにしても、よく話がまとまったもんだな。俺はてっきりダメかと思ったが」


 夕飯の支度をしながら俺はアランに話しかける。


「そうだな、ロズはレーネ出身なんだよ。7年前、レーネに魔獣の大群が押し寄せてな。それでロズは家族を失い、魔獣達に復讐を誓って村を出たんだ」


 アランは一息吐いてから続ける。


「俺はあの時、幼くて何もできなかった。けどその時の情報を知っていたからそれと引き換えに協力を頼んだってわけだ」


「そんなことがあったのか。だから、あいつは一人で魔獣と戦っているのか。それと、魔獣の襲撃にナイトメアっていうのが関係しているのか?」


 食卓に食器を並べながらアランに聞く。


「ああ、ナイトメア、あいつは魔獣を従える力を持つ魔獣だ。7年前に突如現れ、レーネや周辺の村を襲い多くの死者を出す羽目になった。奴は黒い霧とともに襲撃してくる。その名の通り悪夢みたいなやつさ」


「確かに悪夢みたいなやつだな……」


 俺は中継所を襲撃した化け物を思い出しながら言葉を続ける。


「それで、ナイトメアに関する情報っていうのは?」


「それは、まだ言えないな。取引に使うような情報だ、シドに先に教えちゃフェアじゃないだろ」


 少し冗談交じりにアランはそう言うと、料理を食卓に並べ席に座る。


「ほら、料理ができたぞ。冷める前に食べようぜ」


「そうだな。さっさと食べて明日に備えないとな」


 そう言って俺たちは食事を済ませる。


 食事が終わり床に就こうとするとアランが話しかけてくる。


「シド、少し外で戦ってみないか?」


「いきなりどうした、アラン。明日から南の村の周辺調査だぞ」


「そうなんが、俺とシドは一度も戦ってないからな。お互いの実力を測るにはちょうどいいと思うぞ」


「それもそうだな。やってみるか」


 俺とアランはそう言って支度をして宿を出て村の外に向かう。


「アラン、準備はいいか?」


「おうよ、いつでもいいぜ」


 俺とアランは一言、言葉を交わし剣を構える。


 俺は一気に踏み込み剣を振り下ろす。


「うぉおおおお!」


 気迫の声とともに放った振り下ろしをアランは剣を使っていなす。


「今度はこっちからいくぞ! シド!」


 アランは俺の剣をいなした後すぐに剣を俺に向かって払う。


 剣をいなされた俺はその勢いのまま距離を取りアランの払いを避ける。


「速いな! だがこれはどうだ!」


 今度はアランが踏み込み横なぎに剣を振るう。


 俺はアランの剣に合わせるように剣を叩きつける。


「うお。やるな、シド」


 俺の剣とアランの剣がぶつかり、持ち前の膂力を生かしアランの剣をはじく。


 少しよろめいたアランに俺は追撃を仕掛ける。しかしアランは冷静に俺の剣戟を避けながら距離をとる。


 俺はこのままアランに距離を取られると先ほどの様にアランを攻め切れないと思い、さらに距離を詰める。


「来るか、シド」


「ああ、これで決める」



 俺は剣を腰の位置で握り、アランに向かう。


 アランはそれを見て剣を握りなおす。


 俺は走る勢いとともにアランに向かい、剣を振り上げる。


 アランは先ほど同じように俺の剣をいなそうとする。


「させるかぁあああ」


 俺は気合いを入れて、いなされそうになる剣の向きを無理やり修正する。


「さすがの腕力だな……、だが詰めが甘い」


 アランはさらに剣を合わせ、俺の剣を抑える。


 俺は力を込めて、押し返そうとしていると、アランに俺の足を払われ転ばされる。


「はぁはぁ...、負けたか……」


「シドは腕力に任せすぎるところがあるな。でも最後はヒヤッとしたぜ」


 そう言ってアランは俺に手を伸ばす。


「ありがとう」


 俺は感謝の言葉を言いながらアランの手をつかみ起き上がる。


「俺も腕力に任せてしまっていると思うんだが、なかなか難しい」


「確かにシドの力は大きな武器だ。だがそれに頼ってばかりだと大きな魔獣など相手だと打つ手がなくなってしまう。それに、シドの力に技が加われば鬼に金棒だからな!」


 アランの言葉に頷きながら俺は言葉を続ける。


「技……か。アラン、俺に技を教えてくれ」


「俺じゃ教えられることに限りがあるが、できる限りおしえてやるよ」


「ありがとう、これから頼むよ」


「それじゃあ、立ち回りから説明するぞ!」


 アランの言葉に俺は驚く。


「今からか? 明日もやることあるんだぞ」


「こういうのはすぐやったほうがいいんだ。ほら、さっさとやるぞ」


「...分かった。俺から頼んだことだしな」


 そう言って俺はアランに夜が更ける中、指導を受ける。


「......今の俺はアランやロズより弱い。だけど必ず強くなる」


 俺はアランに教わりながらも確かに手ごたえを感じていた。





 朝日を顔に浴びて目が覚める。


「……そうか、アランと一緒に鍛錬をしててそのまま眠ってしまっていたのか」


 草原に寝転がる身体を起こしながら横を見るとアランの寝顔が見える。


「ありがとな、アラン。俺のために遅くまで突き合わせてしまって」


 そう言って俺は立ち上がると伸びをする。


「っと、こんなことをしている場合じゃないな」


 俺はアランをゆすり起こす。


「起きろ、アラン。疲れているのはわかるが、今日はロズの家に行かなきゃならないんだぞ」


「ん……、ふわぁぁああ、シドか?」


 寝ぼけてるアランを引きずって宿に戻る。


「わるいわるい、なかなか起きられなかったんだ」


「気持ちはわかるが、ロズの家に行かなきゃならんからな。さっさと準備をして行くぞ」


 俺たちは準備をしながら軽く食事をとりロズの家に向かう。


 

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