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ゲッテルデメルング  作者: R&Y
一章
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第九話 南の村

 アラン達とともに南の村に向かうことになる。


 助けてくれた人たちのことが気になりアランに声をかける。


「アラン、俺を助けてくれたあの人たちは一体誰なんだ?」


「ああ、彼らは南の村の自警団の方たちだよ」


「レーネには自警団はいないのに南の村にはあるのか」


 俺が呟くと自警団の一人がそれに答える。


「そうだな。辺境地域は南に行くと行くほど魔獣の数が増え凶暴になるから、俺たちの村等は魔獣と戦うことを生業とする者達が自警団として魔獣の侵攻に対処しているんだ」


「なるほど、確かにここらへんは昼間でも魔獣が多いみたいだしな。それにしても中継所がやられるのはこれが初めてなのか?」


 俺の質問にアランや自警団の面子は顔をしかめる。


「今までこんなことはなかったな、それに中継所には南の村の自警団が詰めているんだ。今でも少し信じられない……」


 俺を助けてくれた自警団は確かに皆強力な戦士だった。それを壊滅させた魔獣の大群とあの異形なる化け物。


 思い出すだけでゾッとするが今はそれを考えていてもしょうがない。


「それで、倒れていた人は誰なんだ? 中継所にいた自警団は知っているみたいだったが」


「ああ、あいつは自警団に所属せずに単身で魔獣と戦っているんだ。魔獣に並々ならぬ思いがあるみたいだがな、気になるなら自分で聞くといいだろう。それと男みたいに見えるが女ということも忘れるなよ」


 微笑しながら自警団の一人が倒れていた人のことを説明してくれた。


 激しい戦闘の後で傷等が多く、そちらに目が言っていたがよく見ると汚れているが整った顔と赤い髪をしている。一見男にも見えるが確かに女なのだろう。


 俺と自警団の面子が話しているうちに南の村が見えてきた


「話し込んでいたら、村についてしまったな。ようこそ、ここが魔獣達と人間の最前線の一つ南の村だ。短い間かもしれないがくつろいでいってくれ」


 自警団の一人が俺たちに歓迎の言葉を述べると南の村の人たちも近づいてきて俺たちを案内してくれるみたいだ。


 俺とアランが南の村の人たちと挨拶していると。


「ん……、ここは...どこだ?」


「目が覚めたのか! えーと……」


 倒れていた人が目を覚まし声をかけるアランだが名前を知らないみたいで尻すぼみになる。


「ロズだ。私の名前はロズ。助けてくれたことには礼を言おう」


「気にすんなって、それでロズはどうして一人で戦ってたんだ?」


「助けてくれたことには感謝しているが、私にあまり関わらないでくれ」


 ロズは、明確な拒絶を示す言葉を返す。


 アランとの話の後、ロズは自警団と少し話をして歩き去っていった。


「アラン、嫌われたか?」


 俺はロズが歩き去っていった方を見ているアランに軽口をたたく。


「いや、この村にいればまた会うこともあるだろうしな。それよりも今は魔獣狩りの協力を頼まないと!」


「そうだな、道中いろんなことがあったが南の村に来たのはそのためだからな」


 アランはいつも通りに言葉を返すがどこか思い詰めた様子だった。


「...ロズ……か」


 アランが何かを呟いたようだったが俺はそれに触れなかった。


 俺とアランが話しているうちに自警団の一人が村長を呼んできてくれたみたいだった。


「アランか、大きくなったのう。アルハンは元気か?」


「おう、親父は相変わらず元気だぜ。アルダ爺も元気そうみたいだな」


 アランとアルダ村長が挨拶をかわすとアルダ村長が続ける。


「それで、何の用かのう? 儂の顔を見に来たわけではあるまい」


「今回は南の森の魔獣狩りの協力を頼むために来たんだ」


 アランが来た目的を告げるとアルダ村長は渋い顔をする。


「手伝いたいのはやまやまなのだがな。近場の魔獣が活性化している中、さらにロズが言っている中継所を襲った異形な化け物、この状況で援軍を送るのは厳しいやもしれん」


「確かに……、そういう状況なら厳しいかもしれないな。アルダ爺、無理言ってすまない」


 アランがそう言って引き返そうとするのを遮るように俺が口を開く。


「南の村が厳しいのはわかった。しかし、化け物に襲われた中継所は南の森のすぐそばだ。化け物は南の森を拠点としている可能性が高い」


 熱が入っているのを自覚しながら、言葉を続ける。


「もし南の村の援軍なしで魔獣狩りを行えば厳しい戦いになるだろう。お互いの為を思えばこそ南の村の自警団と協力して対処したほうがいいと俺は思う」


「しかしな、南の魔獣の動きも不穏だ。それを対処しなければ自警団を派遣することはできない」


 俺の言い分に理解を示しつつも難色を示すアルダ村長は何かを思いついたように、口を開く。


「そうだな、もしお主等が南の魔獣達を一時的でも抑えることに成功したら魔獣狩りに我ら南の村も参加しよう。もし、できなければ我々は南と怪物に対処せねばならん」


 考えながら話すには、流暢な口ぶりでアルダ村長はそう言った。


 最初から、交換条件を提示するつもりだったらしい。


「分かった、なんとかしてみせるさ!」


 俺が勢いに任せて承諾するとアランが苦笑いをしながら同意する。


「お前なあ……。けど、協力を頼むには対価を払わないとな。いいぜ、やってやるよ!」


 俺とアランがやる気になっているとアルダ村長は笑いながら俺に視線を向ける。


「気に入ったぞ。お主、名は何という」


「俺はシド、ただのシドさ」


「ふむ、シドというのか。良き名だ。では、南の魔獣への対処を頼むぞ」


 こうして、俺とアランは南の村の協力を得るため南の魔獣の対処を任された。





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