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怪盗は警部で探偵  作者: 仙葉康大
最終章 「怪盗は警部で探偵」編
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第二十六話 「新聞記事と手紙」

 ポストから新聞を取り出すと、白い封筒が地面に落ちた。ミカエルは腰をかがめて拾い上げる。差出人の名前を見て、眉間を押える。


 リビングの机には朝食が並んでいた。目玉焼きとロールパンだ。ファカは座って美術史の本を読んでいる。


 ミカエルは座り、ファカと一緒に朝食を食べる。


「桜が咲いたらお花見でも行くか」

「行きたいです。でも人混みは」

「嫌だよな。穴場に行こう。マルピリス橋のあたりなんてどうだ?」


 ファカは首を縦に振った。目が一瞬合う。ミカエルは朝食の味が気にならなくなった。

 新聞の一面には、「怪盗ルカ、セント博物館侵入」と大きな見出しが載っていた。


「またか」

「怪盗ルカですか?」


 記事にはこう書いてあった。


 三月十五日未明、怪盗ルカはピルサ歴史博物館に侵入し、エルザの聖杯を盗んだ。警察には予告状が届いていており、万全の態勢で警備にあたっていた。しかし、怪盗ルカは数秒で聖杯を盗んだと警官の一人は証言している。ルカの犯行は今回で五回目である。(関連記事2、4面)

 

「私たち、最近影薄いですね」

「こいつのおかげでな」


 ミカエルはロールパンを裂き、マーガリンを塗る。


「あれ? 手紙、ですか?」


 ファカが新聞の下の封筒を見つけた。


「執事のバストロからだ。バストロのことは放しただろ?」

「ミッシェルの教育係だった人ですよね?」

「喧嘩相手と言っても差し支えないがな」


 手紙には次のようなことが書いてあった。


 ミカエル様のお父上がリキル王国の国王になられてはや二十年です。来たる四月三日。国王様の統治二十周年を記念して、お祝い行事を行います。ぜひ御出席ください。


「何て書いてあったんですか?」

「俺とは縁を切るって」

「嘘ばかり」


 ミカエルはファカに手紙を読ませた。ファカは行った方がいいとも、行かない方がいいとも言わなかった。一言感想を言っただけだった。


「バストロさん。きれいな字ですね」


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