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怪盗は警部で探偵  作者: 仙葉康大
第三章「探偵ミゲル」編
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第十八話 「報告」

 エドナはノンばあにワルン捜索の旅を詳細に語った。嘘はつかなかった。ワルンの死についても話して聞かせた。

 

 ミゲルはミートスパゲティのミートボールをフォークで何度も突き刺していた。女王の言葉を繰り返し、自分に刻む。


 ノンばあは言った。


「頼んだわけじゃないが、ねぎらいの言葉ぐらいかけようかね。ご苦労さん」

「まだ話は終わってないんだよ」


 エドナが目を輝かせた。フォークにスパゲティを巻きつける。


「私は今回の旅で思ったことがあるの。私はね。私は――。人がどんなに汚くても、私は、ワルンさんに会いたかった。その気持ちは今も私の中にちゃんとある。ずっとある。だから、私は、泣いちゃう」


 突然、エドナは泣き始めた。泣き声が店内にかかっていたピアノの曲をかき消した。涙が皿に落ちる。ごめんなさい。エドナはそう言っていた。


「謝らんでええ。さっさと食べな」とノンばあは言った。


 ミゲルはハンカチでエドナの顔を拭いてやる。泣きはらした赤い目と目が合う。泣き虫の王女を思い出した。この目の前では、自分は馬鹿で傲慢な王子でいるしかないのだ。エルフの女王が正論を吐こうと、今さら変えられない。


「食わないなら、俺がもらうぞ」

「ダメ」


 エドナは大きく口を開けて食べ物を詰め込んだ。

 帰り際、ミゲルはお代を払おうとした。ノンばあは受け取らなかった。


「その金であの子においしいモンブランでも買ってやりな」


 ミゲルは頷いて外に出た。誰かの欠けた世界が広がっていた。


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