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怪盗は警部で探偵  作者: 仙葉康大
第二章 「警部マイケル」編
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第十三話 「またサボる」

 底のない空が広がっていた。白雲が膨らんでいく。


 いいサボり日和だとマイケルは思った。寝転んだベンチの硬さも気にならなかった。汽笛が鳴って、船が旅立つ。


 女の顔が青空を遮った。知ってる顔だった。


「もう船は出ましたよ。乗らなくてよかったんですか?」

「今日はそういう気分じゃない。お前こそ、こんなところにいていいのか? 昇進したんだろ。警部補から警部に。あ、俺と同じでサボりか?」

「私はサボりません」


 キンリエは水色のヘアピンの位置をずらした。


「昇進は断りました」


 マイケルは嫌な予感がした。人差し指でほおをかく。


「あー、つまり?」

「つまり今後もマイケル警部を補佐させていただきます」

「補佐とは何だ? 具体的に述べよ」

「こういうことですっ」


 拳が腹に食い込み、マイケルは絶叫した。キンリエはマイケルの襟首をつかみ、引きづっていく。


「暴力反対。さっさと昇進しやがれ」

「あなたのサボり癖が治るまでは昇進なんてできません」

「くそ。分かったよ。自分で歩く」


 マイケルはため息と共に立ち上がる。背中と臀部の汚れをはらい、走り出す。どこに行くかは決めていないが、まっすぐ走った。


「待ちなさい」


 声の方を振り返る。キンリエもまっすぐ追って来ていた。


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