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第七話 「ある晴れた朝の死」
顔に温かいものを感じ、ミカエルは起きる。カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。伸びをしている最中に違和感を覚える。隣には誰もいなかった。
寝間着のまま、森に飛ぶ。墓の前にルシーが倒れていた。仰向けになって、早朝の空を眺めているだけだと思いたかった。最後の気まぐれを楽しんでいるのだと思いたかった。でも、目は閉じていた。
胸元にサファイアが輝いている。サファイアには銀の鎖が通してある。ペンダントのようだ。ミカエルは膝をつき、ルシーのまぶたを見つめる。碧眼を心に描く。描いては消し、描いては消す。もっときれいなはずだった。サファイアが石ころ同然に思えるほど、澄んでいたのだ。でも、もう二度と、見つめ合うことはできない。
ミカエルはルシーを抱えて立ち上がる。小鳥のさえずりを浴びながら、城へと歩いて帰る。空間軸は使わなかった。
ルシーは死んだ。あとには、約束だけが残った。




