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集合写真

作者: 尚文産商堂

もうすぐ卒業だ。

今日は記念写真を撮るということで、学校に来ている。

最近は授業も終わって、自宅学習という名目の休みになっていた。

大学や就職が決まった友達らは、卒業旅行と称して、遠くへ遊びにいっていたらしい。

これを過ぎたら、あとは卒業式の当日になるまで会うことはないとなれば、お土産の交換会も、ちょうどこの日になっていた。

「これ、東京に行った時の」

私の友達も例に漏れず、東京へと向かった口だ。

それも、一人で。

お土産は東京ばな奈だったり、スカイツリーのクッキーだったりと色々だ。

「ありがとー」

集合写真はクラスごとで順番に撮影される。

私たちはGクラスで、7番目だ。

その間、教室で待機になってて、こうやって楽しく雑談となる。

「もう卒業なんだね」

ポリとクッキーを口で割った友達が呟く。

「そうだね。入学からあっという間だったよ」

私も不意に、これまでのことを思い出す。

色々あった。

でも、楽しかった。

それだけははっきりと言える。


担任が私たちを呼びに来て、撮影場所の講堂へと入る。

正面向かって左が女子、右が男子だ。

列は背が高い方が後ろにいく。

3列になる中で、私はちょうど女子グループの真ん中に立つこととなった。

「それでは撮りますね」

カメラマンは、私たちをファインダー越しに見ている。

彼は私たちの何を見ているのだろう。

遠い過去の記憶、それとも未だ見えていない将来。

フラッシュがバッと焚かれ、一枚目が取られた。

「あと二枚撮りますね」

顔をこちらへと向けて、カメラマンが教えてくれた。

そしてファインダーを通す。

きっと、カメラマンはこれまでを撮っているんだ。

二枚目を知らせるフラッシュ。

そして、私が未来にいた時、私たちに過去を見せるために今を撮っているんだ。

少し間が空いて、そして三枚目。

「ありがとうございました。降りて大丈夫ですよ」

このために今日は窮屈になった制服を着て学校へと来た。

でも、その価値はあると思う。

未来はどうなっているかはわからないけど、私にも子供ができた時、きっと今日の写真を見せるだろう。

そしてきっと言うんだ。


写真は今を切り取り、未来で過去を見るためのものなんだよ。と。

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