騎士隊長の提案
「ア、アルシュ!?なんでここにいるの!?」
フィリアが驚いてアルシュに問う。
「んー?ちょっとハルトくんに用があってね〜、あなたは邪魔だからどっか行ってて。」
アルシュの棘のある物言いにフィリアもたじろいでいる。
「流石に今の言い方は酷いんじゃないか?フィリアは俺の恩人だ。見過ごせないぞ。」
「ごめーん。怒らないでね〜?けど私はその子が嫌いなの。優しくなんてできませーん。」
糠に釘を打つような無駄なやり取り。恐らく謝る気もないらしい。俺は主題に入る。
「それで、俺に用って?」
「ここじゃ話せないかな。後、アルドレア家のお嬢様はお仕事に勤しんで来てくださいねー」
「フィリアが聞いたら駄目な話なのか?」
「まあねー」
俺はフィリアの方を見る。フィリアは不安に満ちた顔で俺を見ている。
「...大丈夫。ちょっと話をしてすぐに戻る。フィリアはここに居てくれ。」
「本当に大丈夫...?アルシュは考えが分からないところがあるから.....ううん、ハルトを信じなくちゃ、無理はしないでね」
「おう、約束する」
フィリアが屯所に入るのを見届けて、俺は改めてアルシュに向き直る。
「そんな大袈裟に言わなくても別に斬りかかったりなんかしないのに〜」
「それで、用件はどこで話すんだ」
「ま、ついてきて。急がない急がない〜」
アルシュが歩き出す。俺はその後ろをついて行く。アルシュのふわふわした金髪が俺の目の前で揺れている。
アルシュと俺が歩いて向かったのは一度訪れたことのあるところだった。
「ここって...サレルノと戦った場所...」
「そうだよー、けどここホントは訓練所なんだけどね、中に入るよ〜」
中に入ると、サレルノと戦った、乾いた土の円形のフィールドが目の前に広がる。こんな場所で何を話すというのか。
「さてじゃあ話...というよりは提案かな、それを聞いてもらおうかな〜」
「提案...?」
騎士隊長が俺に提案?しかも一度しか会ったことがないのに?一体なんだ?
俺の頭の中で疑問がぐるぐる回る。何を企んでいるのかサッパリだ。
「ハルトくん、あなた私の弟子になりなさい!」
「...は?弟子?」
「そう、私があなたに剣を教えてあげるわ!」
「いや、なんで...?」
何を言い出すかと思えば弟子になれだと?今度こそ本当に何を考えているか分からない。
「理由は簡単、私があなたに興味があるからよ」
「それだけ?」
「えぇ、それだけ。あと暇だからかな〜」
「騎士隊長がそんな理由で弟子作っていいのか...
とゆうか仕事は?」
「そんなのは副隊長にポイッ!」
なんて自由な人だ...と半分呆れて半分感心する。
「とゆうわけで〜、はいこれ。」
アルシュが何かを投げてくる。受け取ったのは木剣だった。
「とりあえず、今の力を見たいからそれで攻撃してみて」
しかし、そうゆうアルシュは武器を持っていない。それに格好も別に鎧を着ているわけでもない。つまりは丸腰だ。
「いや、丸腰の女の子攻撃するなんてできねぇよ
...」
「騎士隊長を女の子扱いとは余裕だね〜。大丈夫、多分ハルトくん、攻撃当てれないから」
「そこまでゆうなら...後で後悔するなよ...!」
俺は地面を蹴る。アルシュは動かない。アルシュと俺の距離がぐんと縮まる。俺はアルシュの側腹を狙って剣を振った。
...当たる...
そう思った直後、アルシュが目の前から消えた。
「!?」
俺は木剣の勢いに身体が引っ張られその場で転ぶ。
「うーん、確かに太刀筋はいいんだけどな〜」
声がした方向をみる。丁度俺の背後。もちろん声の主はアルシュ。あの一瞬で移動したのか...?
「君の攻撃は読みやすいんだよー。今のはわざとギリギリまで避け無かったけどー」
「...へぇ。今ので手加減されてたのか...じゃあもっと本気出さないとな...!」
俺はアルシュに向かって走る。そして剣を振る。しかしアルシュは全て避ける。まるで未来を見ているような動き。俺は驚きつつも剣を振り続けた。
そんな俺の攻撃も二分も経たぬうちに体力が切れて終わった。もちろん攻撃は一度もアルシュには当たっていない。
「まー、採点すると15点くらいかな〜まあ伸び代があるってことだね」
「...っハァ...ハァ...っ...なんで当たんないんだ」
「言ったでしょ?ハルトくんの攻撃は読みやすいの。良く言えば正直。悪くいえば馬鹿正直。」
「...その例え分かんねぇよ...」
俺は体を起こす。呼吸も整ってきた。
「どうすれば当たるんだ...」
「戦いで1番大事なの何か分かる?」
「...速さ?」
「んー、それも大事だけど速さには限界があるでしょ?1番大事なのは観察力、観る力よ」
「観る力?」
「そ、相手の目線。動き。呼吸の乱れ。色んな情報を目で見て整理する。それは防御と攻撃の基礎になる」
「そんなのどうやって鍛えればいいんだよ...」
「それは戦いで学んでいくしかないねー、だから当分は私に攻撃を当てるのが課題ってことで」
「くっそ...絶対当ててやる!」
俺はもう一度剣を握った。
そして地面を蹴った。乾いた土が飛び散った。