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飽くなき悪魔とヒキニート  作者: ハンズ
第一歩
7/20

ヒキニートの騎士デビュー

瞼を通して朝の陽の光が差し込んでくる。

俺はゆっくり目を覚ます。普段のヒキニート生活からは考えられない健康優良児のような目覚めだった。

「...今何時だ...?」

辺りを見回す。時計は無い。...しかし何か忘れているような...あ...あーーー!!!

俺は慌てて部屋から飛び出す。そして屋敷を縦横無尽に駆け回った。(これは比喩表現ではなく普通に屋敷が広すぎるためこう言うしかないのだ)

そして2分後に第一村人あらぬ第一使用人発見。

「あ、あの!」

「おや、貴方はお嬢様のお客人。どうされました?」

「フィリアはもう出ていきました?!」

「ええ、お嬢様なら明の六時にはお屋敷を出られます。騎士の屯所には七時までには必ず着いておかねばならないようで」

「...ちなみに今の時間は?」

「明の九時でございます」


「完全にやらかしたァ!!」

俺は屋敷を飛び出し騎士隊屯所へ向かう。勿論だが全力疾走で。

「ヤバい...初日から遅刻とか完全に怒られる!新人いびりとかいっぱいされる!もしくは首チョンパか!?」

ちょっと途中から何言ってるか分からないが寝起きなのと、遅刻真っ最中でテンションがおかしくなってるので許してくれ...

昨日フィリアと一緒に一番隊屯所に向かった道の途中を曲がると二番隊屯所なので道は覚えている。このペースだと恐らく15分で着く。俺は足を早めた...元々全力疾走なのでこれ以上は無理だが気分的に。


「...ハァ...ハァ...着いた...」

二番隊屯所に到着。俺は玄関の扉を開ける。扉の奥では騎士が何人か立ち話をしていた。その騎士達が一斉に俺を見る。

「あの...えと...」

騎士達が小さな声で何か話している。


...アイツがサレルノさんを倒したという?

...ふん、騎士にしてくれなどふざけやがって

... しかし実力は本物か...


やはり印象はあまり良くないらしい。まあそれも納得は出来るが...やはり心に来るものがある。

「.....っ」

「ヨォ!新人!初日から遅刻とは度胸あるなお前さん!」

いきなり背中を叩かれる。後ろを見ると俺より背の高い青い髪の青年がいた。

「お前が副隊長を倒したとかゆう期待の新人か!見た目はあんまり強そうじゃねぇな!」

いきなり失礼なやつだ。しかし感じはあまり悪くない。クラスの同級生のような感覚。まぁ俺学校最後に行ったの一年前だけど。

「あれは...まあまぐれだよ。えっと君は?」

「俺の名前はゲルド!お前の先輩だ!よろしくな!新人!」

バシッとまた背中を叩かれる。

「...あぁよろしくな、ゲルド」

こいつとは仲良くなれそうだ。


「お前達、何をやっている。」

聞き覚えのある声...立ち話していた騎士達がそそくさと散っていく。

「サレルノ.....さん...」

呼び捨ては流石にまずそうなのでさん付けしておく。

「初日から遅刻とは怠慢の極みだな」

「すみません」

「...貴様の.....いや同志である者にこの呼び方は失礼だな。アサギリ、お前の力は私が身を持って知っている。だからこそ規律は守るべきだ。力は規律をもって強さとなるからな。そして...これからは共に戦う仲間としてよろしく頼む。」

「...?.....!?」


えぇーー!あのサレルノがこんなに優しいなんて!お前キャラどっかに落としてきただろ!


なんてツッコミはもちろんできず

「...よろしくお願いします...」

「よし、では見習い騎士であるお前に任務を通達する」

「...任務?」

「屯所内の清掃、木刀の手入れ、書類の処理、花壇の手入れ....」(長すぎるので割愛)


小一時間後、俺は箒を持って屯所内を掃除していた。屯所は二階建てで横に広い構造。先に一階を掃除して二階に手をつけたところだ。

「結構広いな...一階だけでも充分苦労したぞ...てかもっと任務らしい事したかったぞ...」

そんなことをブツブツ言いながら掃除していると

「...ハルト!」

この声は聞き慣れた声。そして朝からずっと聞きたかった声!

「フィリア〜!やっと会えた〜!」

「ごめんね、仕事が結構多くて。会いに行こうとは思ってたんだけど」

「俺に会いたかったの!?まじ感激だよ!」

「それはそうと...ハルト、遅刻したでしょう?」

「ゲッ...!」

やっぱりバレてたか...

「まあ私が起こさなかったのも悪いけど、ハルトも気をつけてね!」

「...善処します...」

「明日からは私と一緒に屯所に向かうこと!

分かった?」

「分かりました...」

まあ明日からはフィリアと出勤できるようになった。プラマイで言ったら圧倒的プラス!

「そう言えば騎士って実際の仕事って何するの?」

「騎士の使命は王国の治安維持と市民の安全を守ること、そして王国に剣を捧げることよ」

「結構アバウトな仕事なんだなー」

「仕事じゃなくて使命!仕事は私がやってる書類に判子押すだけの作業のこと!」

「...いつもお疲れ様です」

「まったく...あ、今日は歓迎会をするわよ、私は仕事があるから行けないけどね。」

「...え...誰の?」

「もちろん、あなたの」


言われた仕事が全て終わったのは日が落ちきったくらいのことだった。

「ふぅ...これで終わりっと、くぅ!疲れたぁ!」

俺は思いっきり伸びをする。

「おっす、新人お疲れさん!」

「お、ゲルド」

「丁度いい所で仕事が終わったな!今からお前の歓迎会するから店行くぞ!付いてこい!」

「ちょっと休みたいんだが...」

「馬鹿、今日の主役無しじゃ歓迎会できんだろが!早く来い!」

俺は仕事終わりの重たい体を起こしてゲルドに着いて行った。疲れているがゲルドの人の良さに免じて付いていってやろう。

店に着くと騎士達が既に座っていた。店はレストランと酒場の合体版のような所で嫌いではない雰囲気の店だった。

「では、これから我らの二番隊に入隊した新しい同志を紹介する。アサギリ・ハルトだ。」

紹介してくれたのはサレルノだった。サレルノも酒が少し入っているのか表情がと穏やかだ。てか主役来る前に飲むなよ...

「えと...今日から二番隊に入りました、アサギリ・ハルトです...えっと、これからよろしくお願いします。」

ヤバい、こんな状況生まれて初めてだ。何を話せばいい!わかんねぇ...!

「...えっと...多分俺の印象が悪い人もいると思うけど...それはこれから取り返そうと思います。皆の役に立てるように頑張るので見ていてください」

...これでいいか...?

一瞬の静寂、そして全員の拍手が俺を囲んだ。

中には立ち上がったり口笛を吹いたりしている.....

...あの口笛吹いたのゲルドだ。

俺の挨拶の後は皆で料理と酒を楽しんだ。もちろん俺はジュースだが。

俺の歓迎会はかなり長引き、日を越すまで続いた。

「じゃ、また明日な、ハルト。明日は遅刻すんなよー!」

「おう、じゃあなゲルド。」

俺はその足で屋敷に戻って自室に向かいベッドに転がり込んだ。

「ふぅ...今日は一日静かだったな、モス」

「まぁね〜」

ポケットのクリスタルから猫が飛び出してくる。

「掃除ばっかりだしつまらないからずっと寝てたんだよ」

「お前は気楽でいいよな...」

「えへへ〜何せ悪魔だからね〜、気楽に生きるのが僕達さ」

「俺はもう寝るぞ」

「ん、また用があれば呼んでね。僕もまた眠るとするよ」

モスはクリスタルに戻って行った。

「ふぅ...」

俺は目を瞑る。今日は疲れていたのもあってかすぐに寝付くことができた。夢を見ることもない程に深い眠りだった。


「...ルト、ハルト」

フィリアの声で俺は目を覚ました。

「ん...おはようフィリア」

「おはよう、ハルト。さ、約束通り一緒に屯所に行くわよ。」

「分かった、支度するから待ってて」

「部屋の前で待ってるからね」

俺はベッドから降りる。そして支度を始めた。

さあ、新しい一日の始まりだ。


フィリアと二番隊屯所へ向かう。何気ない話を交わしながら向かうその時間はとても短く感じられた。そう平和だった。これ以上ないほどに。

...しかし...

「ん...?あれって...?」

二番隊屯所の前に人影が。それも見覚えのあるゆるふわ金髪。忘れるはずがない。

フィリアも気付いて咄嗟に俺の後ろに隠れる。

その人影は俺達に気づくと近付いてきた。

ふわふわした金髪に、澄み渡る空のような碧眼。

「ハルトくん!会いたかったよー!」

アルシュが現れたのだった。

どうなる俺の騎士生活。

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