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16 合同授業

「だ、大丈夫ですわよ、ミアさん。その、入学試験の時でも、何度か爆発させたところを見られていたわけですし。ミアさんの爆発のことは、既に学園中で話題になっていますから、今更ですわよ?」

「あのトーマス先生に興味を持たれているってことで、Ⅰ組の子たちもルシエルの魔力については関心があるみたいだし、大丈夫、いつも通りにいけば。それに、たぶん、Ⅰ組の子たちは爆発が見たいんじゃないかな? だから、ほら! みんなのために爆発させてみましたくらいの気持ちで、むしろドカンと爆発させちゃっていいと思うよ?」

「……………………」

 ロザリアとルシエル。

 あたしを元気づけようとする二人の気持ちは、気持ちだけは大変うれしんだけどさ。

 内容的には、むしろ追い打ってるから!


 これから、Ⅰ組と星組の合同実技授業が始まるのだ。

 お互いの実力を知るのも大事だからということで、年に何度か合同で授業をするんだって。

 よそのクラスの子たちの前で、爆発を!?

 って、青くなっていたら、ラーラ先生にも言われたんだよね。

「気にせず、どんどん爆発させていいからな」

 って。

 親指立てて、ニカって笑顔で、言われたよ。


 授業は、星組校舎の特別実習室で行われる。

 場所は、星組と普通科の校舎を交互で使うんだって言ってた。

 で、まず最初は星組の番。


 一年Ⅰ組の生徒は、全部で六人しかいない。星組は十五人だから、半分以下だ。みんな、落ち着いた色のローブを着ていた。黒、白、紺、それから灰色。

 こうしてみると、星組は随分と個性的と言うか、カラフルだなーと思う。

 あたしのローブは、鮮やかな黄緑だし。リョーコちゃんはオレンジ。パチュアは赤。まあ、一番異彩を放っているのは、ロザリアの白黒格子柄ローブだけど。

「あちらが、白の魔女シザリー様のお孫さんのチェルシーさんですわ」

 ロザリアにこっそり耳打ちされて、あたしはふわぁと感心し、聞き耳を立てていたルシエルは凍り付いた。

 レイス君に匹敵するくらいの美少女だった。いや、レイス君は男の子だけど。

 色白だけど、頬は健康的な薔薇色をしていた。髪の色は艶やかな黒。癖のない綺麗な黒髪を後ろで一つに結わえている。瞳の色も髪と同じ黒なんだけど、夜空を切り取ったかのような不思議な輝きを宿している。なんというか、神秘的な美少女だった。

 レイス君と並べて鑑賞したい。

 たぶん、お金がとれるんじゃないかと思う。

 ローブの色は、紺だった。

「どうして白のローブじゃないのかとか、聞きに行かないの?」

 女子としてのあまりの実力の差に、かえってそうそうに諦めがついたのか、金縛りが解けたルシエルはロザリアをいじって憂さを晴らすことにしたようだ。

「ああ、それでしたら。何でも、白は汚れが目立つし、この方が自分に似合うからとお答えになったそうですわ」

「ふーん?」

 あ、誰かもう聞いてみた子がいるんだ。そして、ロザリアもその噂はチェック済みなんだ。

 そして、ルシエルはなんか面白くなさそう。

 あたしは、ちょっとお話してみたいなーって思う。

「ルシエルさんは、おばあさまにコンプレックスをお持ちの割には、ローブはお揃いの黒ですのね?」

 うわ、ロザリアの反撃来た!

 と思ったけど、チラリとロザリアの顔を見たら、純粋に好奇心から聞いているみたいだった。

「え? まあ、自分で選んだわけじゃないから。おばあちゃんに買ってもらったんだよ。うちのおばあちゃん、黒のローブしかもってないんだよね。こだわりがあるわけじゃなくて、単に色を選ぶのが面倒くさいだけみたいでさ。当然、孫のローブも黒。ちなみに、最初に黒を選んだのは、その時一番安かったかららしいよ。そう言えば、ミアのおばあさんはいろんな色のローブを持っていて、気分で色を変えてたらしいね?」

「うん。いっぱい持ってるよ。ローブコレクター?」

「そ、そうなんですのね」

 ロザリアは新たな黒の魔女情報に頬を紅潮させている。ルシエルとはいがみ合っているけど、黒の魔女の情報が手に入るのは、素直に嬉しいらしい。

 もう、普通に仲良くなっちゃえばいいのに。


 そうこうしている内に、授業が始まった。


「よし、ミア。じゃあ、まず一度、爆発させてみてくれ。盛大にやっていいからな!」

 早速か!

 ラーラ先生に促されて、あたしは渋々みんなの前に出る。

 みんな、実習室の後ろに固まっているので、ちょうど、教室の真ん中に立つ感じ。みんなに背を向けて、教室の前側の何もない空間に向かう。

 正直、見世物にされているみたいで気が乗らない。あたしが、頑張った成果を発表する、とかいうわけでもないし。

 まあ、でも、物は考えようだ。

 せっかくの、特別実習室。

 そして、先生も盛大にやっていいと言っているのだ。

「それじゃ、本当に思い切りいきますから、後のことは、よろしくお願いします!」

 これは、チャンスだと割り切ることにした。

 そう思えば、ちょっと楽しみにも思えてくる。

 そう、せっかく。

 せっかくだから。

 いつもよりも、大きめの構成、いってみよう。

 そこへ、調整とか考えずに、流し込めるだけ魔力を流し込んでいくのだ。

 入学試験の最後に、魔力水晶に思い切り魔力を注ぎ込んだ時のことを思い出した。

 そんなの、初めての経験だった。

 でも、あれは、とても気持ちがよかった。


 魔法は、いつもと同じ魔法花火。

 でも、今日は色数も増やして、花びらの数も増やしてみた。サイズは、いくら防護の魔法がかかっているとはいえ、室内なのでいつもより心持大きい程度。でも、魔法の構成は段違いに複雑になっている。

 授業ではまだ、ここまで複雑な構成は習っていないからか、背後から感嘆のため息が聞こえてくる。これは、ちょっと、気分がいい。

 気をよくして、あたしは。

 いつも、抑えることにばかり一生懸命だった魔力を、何も考えずにただ開放する。

 ああ。扉が開く。

 どこからか、魔力の流れがやってくる。まずは、あたしの中へ。

 いつもはここで、扉を閉めようと頑張るんだけど、今日はそのままでいい。このまま、流れ込んでくるに任せる。

 ああ。あたしの中に、魔力が満ちていく。

 気持ちいい。

 あ、これ、いっぱいになったら、どうなるんだろう?

 魔力水晶の時は、そのまま流し込んで、そのまま自分も流されそうな感じにもなっていたけど。

 このまま、何も考えずに、作り上げた魔法花火の構成に魔力を流し込んでいけば、みんなのご期待通りに爆発が起こるはずなんだけど。

 ふとした思い付きが気になって、あたしは、自分の中に魔力が満ちるのに任せることにした。

 はふ。気持ちいい。

 もうすぐ、いっぱいになる。

 いっぱいになって、そして。

 あたしから、溢れだす。

 溢れた魔力は、そのまま、あたしの周りに纏わりつくように漂っていて、なんか身に纏ってるみたいな感じ?

 ああ。なんだ。なるほど。そういうことか。

 なんか、分かってしまった。

 無理やり扉を閉じることで、魔力の流れを調整しようとしたからいけなかったのだ。

 そのまま、流れ込むに任せていればよかったんだ。

 扉は開いたままだけど、流れ自体は止まっていた。

 つまり。

 この状態まで持ってくれは、自然に安定するのだ。

 こんなことだったのか。

 とっても、清々しい気分。

 魔力はあたしと共にあるって感じ。

 あたしは、ゆったり落ち着いた気分で、編み上げた魔法花火に魔力を流し込んでいく。

 うん。大丈夫。安定してる。

 ちゃんと、コントロールできる。

 そして。

 星組の特別実習室に、幾重にも花びらが重なった、綺麗な花が咲いた。


「あ。ごめん、先生。成功させちゃった。もう一回、今度はちゃんと、爆発させるね」

 コントロールできるってことは、成功させるも爆発させるも思いのままってことなのさ。

「あ、ああ。いや、それは、もういい。もういいんだが。ミア、おまえ、もしかして?」

 ラーラ先生は、何だか魂が抜けたみたいだった。

 先生、どうしたんだろう?

 まあ、いいや。

 あたしは、ラーラ先生を見上げて、笑顔で答えた。

「うん。なんか、分かっちゃったかも」

「そうか、まあ、よかった。だがしかし、こんなことならトーマスにも声かけときゃ良かったな」

「え?」

 笑顔が凍り付いた。

 だって、あの先生、全裸になれとか迫ってくるし。

 こんな、Ⅰ組の生徒もいるところで、全裸になれとか言われても。


 魔力をコントロールできるようになれば、もうトーマス先生のお世話にはならなくてもいいんじゃないの?

 って、思ったんだけど。

 どうやら、そういうわけにもいかないようだった。


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