確かな幻想
どうもこんにちは。ファウストです。
今回は短編を書いてみました。
短すぎるものですがぱっと読んでくれれば嬉しいです。
「確かな幻想」
小学生の神田悠は読書好きな男子だった。
親は、海外で働いており、おばあちゃんと二人暮らしだった。家はそれほど裕福ではなく、世間一般から見れば少し貧乏とされる所だろう。
放課後帰っていると、家の前の路地に気がついた。
「あれ、こんなのあったかな?」
気になり入ってみるとそこにはひっそりと佇む喫茶店があった。その名前はエトワール・フィラント。そこには高校生位の女性が1人、カウンターで座っていた。
「ん?お客さんかな?いらっしゃい。」
そう言って、こちらに向かって微笑む。
「あの、ここで本読んでもいい…んですか?」
「あぁ、構わないよ。」
こうして、僕、神田悠は不思議な雰囲気を持つ女性、星枷 雪と出会った。
日々を過ごしていくごとに、彼女とは仲良くなっていった。殆どが世話を焼かれただけであったが、それでも嬉しかった。もし姉がいたりしたらこんな幸せな生活なのかと、変な幻想を抱いてしまった。
それから中学、高校とここで勉強したり、ゲームプログラマーになるために有利な言語資格の勉強をしたりした。偶には彼女に愚痴を聞いてもらったり、慰めてもらったりと、親よりも長い時間を共に過ごした。
本当に、大切な時間だった。
そして、高校の卒業式。
中学の時とは違い、2月に行われる。
だが、中学の時と同じように終わるとすぐに、家まで走って帰る。
家に着き、カバンを放り投げ、財布と携帯の有無を確認して、急ぎ足で向かう。いつもと同じように、話を聞いてもらって、自慢して、褒めてもらって、調子に乗るなと怒られて。
家の前の路地を抜けるとそこには、今まであったものは無くなっていた。喫茶店が跡形も無く、代わりに小さな祠が出来ていた。
僕は駆けた。何も考えられずに、ただ駆ける。
探した。
周りにも聞いた。
どれだけ怪しまれたっていい。
今はあの店を、あの場所を、あの人を探すんだ。
見つからないまま、夜になり、月明かりが、惨めな僕を照らす。空回りをした僕を夜なのにも関わらず星が煌々と照らしていた。
ふと、視界の上側で、何かが走った。
しぶんぎ座流星群。
星が、たくさんとは言えないが、チラチラと落ちていく。
そこで、彼女とのやりとりを思い出した。
「流れ星には願いを叶えると言われている。けど実際はそうじゃないんだ。」
「どうした?急に。そりゃ、現実にそんなものがあったらみんなそれに縋るもんな」
「あぁ、でもな悠。そう言われる所以はあるんだ。」
「昔の人が叶った…とかか?」
「違う違う、流れ星が流れる一瞬の間にも、常に願いを叶えたいと思って努力してるからだよ。」
そうか、この星は雪姉が見せてくれたものなのか。
俺にくれた最後の道しるべ。
ここでカッコいい男なら、前を向いて、歩き出すのだろう。
だが、生憎俺はかっこいい男ではない。
親よりも一緒にいてくれた。
本当に姉のように思っていた。
そんな彼女に
「会いたい…もう一度だけ…」
あぁ…本当にダメな男だな、俺は。
ここで泣いちゃいけない、いけないのに、涙が頬を伝う。
泣きじゃくる程でも、嗚咽が出る程でもないが、それよりも苦しい。
でも、彼女は教えてくれた。
流星は本当に願いが叶うものだと教えてくれた。
だからこそ、流星に願う。
そして、探すんだ。
どれだけ時間がかかっても構わない。
「これが真っ直ぐ向くってことなのかな?雪姉」
そのつぶやきの直後、星たちが一斉に輝きだし、そして、儚く消えていった。
どうだったでしょうか?短編となると短すぎになるのが欠点なんですよね…それは追々解決して行きたいところです。