プロローグ 「運命の出会い」
——その日、彼の運命が大きく変わった。
魔法使い、魔物、獣人、人間、あらゆる種族が争い、殺しあっていた世界『カストレール』。そんな世界のあらゆるものに悲しみ、怒り、呆れを感じていた彼の心がその日を境にして、希望へと変わっていった。(念願の夢が、ついに叶うときが来たんだ……)——そう、思っていた。
その要因となったのが、今彼の目の前にいる少女であった。
しかし、少女は彼の気持ちとは裏腹に、彼を見下し、この世界に対して恨み、そして絶望を感じているかのような気を彼は感じた。
「何故私のことを恐れない? 何故私に驚かない? 何故私のことを憎まない?」
少女はまるで、今にも狩猟者に捕らえられる獲物のような、希望のない目でこちらを睨んでいた。
だが、彼はそんな目をしている少女に臆することなく、ただただ感謝と畏敬の念を抱いていた。少女は彼にとって希望の基でしかない存在なのである。
彼は同様に、以前の自分と同じものを少女に感じていた。悲しみ、怒り、呆れを感じていた、以前の自分と同じもの——。
彼は救いたいと感じていた。彼女が俺を救ってくれたように、次は俺が彼女を救う番である、と——。
彼は少女に産声をあげるように声を張っていった。
「俺と一緒に、この世界を希望に満ち溢れたものにしてみないか? 運命に抗ってみないか?」
辺りには不穏と平穏の空気が交互に入り混じっていた。地下百メートルで炭素が結合し、何物にも侵されないダイヤモンドとなっていくかのように——。