昭和31年春⑧
更新が滞っていて申し訳ありませんでした。 お話を覚えている方はいらっしゃるでしょうか…?
基本的に一話完結ですが、今話は前話の続きです。
「蓉子ちゃん、風邪なんて珍しいね。大丈夫?」
放課後、桜子が帰宅すると、熱を出して欠席した蓉子の同級生が部屋に詰めかけていた。
「みんな来てくれてありがとう。寝ていたら治っちゃった」
時刻は午後4時半、高校は授業が終わっているかも怪しいので小林甫がいるはずが無いが、早引きするという事態に備えて桜子は小林家を監視していた。今朝もあの調子で待っていたのだろうから。
「いっつもお勉強しているもんねぇ、たまには休んだらどう?」
「そうだねえ」
いつも、という訳ではないが、勉強熱心な蓉子。昼休み以外の休み時間は教科書とノートに向き合っている。
「そうだ、今日先生がね、『ひと月すれば中間考査があります。 お勉強しなさい』って仰ったのよ。調子良くなったら教えて!」
うんうん、と頷く一同。ほとんど全員が生まれたときから顔見知りの幼馴染みなので、小学生の時の優等生に勉強を教わって乗り切ろうとしたのだろうか。
「ね、蓉子先生。教えてください!」
驚いた。部活動の無い日は桜子が部屋や客間で勉強会をしているのは見ているが、自分が他の子に教える姿なんて想像もつかない。
だが、蓉子は断ることができず、放課後の教室などで集まって勉強会を開くようになった。