表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三姉妹物語  作者: Madoka Mine
昭和31年
8/18

昭和31年春⑦

翌日の月曜日。 その日は桜子の15回目の誕生日だった。

蓉子は桜子が部屋を出る前に起きて、南京玉を組み合わせたアクセサリーを作っていた。


「桜子姉さん、喜んでくれるかなあ」


独り言を言いながら、流行りの歌を歌いながら、ビーズ手芸を楽しんでいた蓉子だったが…。


日が昇ってきた頃、彼女は赤い顔をして居間に現れた。


「お蓉、どうしたんだ。熱を出したのか?」


父が蓉子の額に手を当てると、やけに熱い。

高い熱を出したようだ。


「お父さま?」


戦時中に生まれた末娘のことを、父は特に可愛がっている。

上の娘たちも可愛がっていない訳ではないのだが、幼少期から虚弱な蓉子の身体は母より気遣ってきた。


「今日は寝ていなさい」


だが、当の蓉子は家も好きだが学校も勉強も好き。少しの熱で学校を休むのは恥と考えていた。


「どうしてですか、私学校に行きたいです」


「ダメだよ、蓉子。お父さまが心配してるのに。他人の厚意ってのはねぇ、進んで受け入れるべきだよ」


「姉さん、それもどうかと思うけど…」


横から突っ込んできた桜子の助言もあり、蓉子は渋々部屋に布団を敷き直した。


熱で浮かされたからだろうか、童顔な蓉子が妙に色っぽく見える。

こんな姿を小林甫には見せられないと、桜子は思った。


だが彼は今日もめげずに外で待っているのだろう。さてどう言い訳しようか。


「お早う桜子ちゃん。今日は蓉子ちゃんと一緒じゃないんだね」


そうこうしているうちに、甫と鉢合わせてしまった。

桜子はあたかも本当のことのように、悲しそうに告げた。


「蓉子、寝過ごしてしまったようで……。遅刻しそうだから甫さんにお会いできないと寂しがっていました」


「え、蓉子ちゃん寝過ごしたの? 珍しいね」


「だから、先に行っててほしいと」


「そっか、分かったよ」


蓉子がいなければ何て素っ気ないのだろう。

桜子はそう思ったが、普段からこんな調子だったら苦労しない、とぼやいた。

ビーズ手芸は、大正末期に日本で大流行したそうです。

また、戦後は日本独自のビーズカバンの制作が流行り、それを着物とセットで使うことが多かったそうです。

本作では、アジアンノット(飾り結び)と組み合わせていることにしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ