表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三姉妹物語  作者: Madoka Mine
昭和31年
15/18

昭和31年夏④

「わぁー、和子ちゃん可愛い! 私もお母さんになりたいなぁ」


「じゃあ、まずはお嫁に行かなきゃねェ」


男性であるにもかかわらず、女性も驚くほどの長い時間を使って身嗜みだしなみを整えた甫が玄関をくぐってきたのは、蓉子がユキノの娘を抱いているときだった。


「蓉子ちゃんに、赤ちゃん…?」


学業はふるわなくても、妄想なら天下一品の甫。案外、漫画や小説の原作者という名のネタ提供者に向いているかもしれない。しかし彼の妄想全てを忠実に物語化するのに子ども向けの漫画は似合わない。


そんな彼の脳内は、10年後の蓉子で埋め尽くされていた。


自分は28歳、蓉子は23歳になる10年後。結婚適齢期で縁談がどっさり舞い込んでくるだろう。だが蓉子だけは縁談という恋愛抜きの結婚から守って、所帯を構えるのだ。


自分は三男なので、滅多なことが無い限り家を継ぐことはない。どこに新居を構えようか。

実家近くなら気軽に里帰りできて良いが、東京や横浜などといった都会に住むのもいい。蓉子と、蓉子よりも垢抜けて、洗練された子どもたちに囲まれて愉快に暮らすことが出来るならどこでも良い。


それにしても、蓉子と自分の子どもは可愛い。どんなに手のかかる子でも、とんだガキ大将でも、ツッパリになっても可愛いだろう。


甫の妄想は、自分自身の人生設計図に変わり果てている。


「甫さん、お囃子はやしが聴こえてきましたよ。行かないんですか?」


「あっ…勿論! 行こう行こう!!」


今日は神社の縁日だが、盆踊りも神輿もある。苦労して貯めた小遣いで何を贈ろうか本気で悩んでいた甫だが、神社までの道のりを蓉子と二人で歩くという現実に浮かれてそのことは忘れていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ