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三姉妹物語  作者: Madoka Mine
昭和31年
13/18

昭和31年夏②

部活動の練習が無い、夏休みの最初の日曜日。近所の神社の縁日の日であった。


「姉さん、見て!」


今春、中学校に入学した蓉子は入学祝に浴衣の生地を新調してもらい、母や祖母に和裁を習いながら作った。

今年の自由研究の題材にもなっており、既にまとめたとか。


「これ、蓉子が作ったの?」


「そうだよー」


着付けの苦手な桜子を待つ間に、苗子と蓉子が話している。


「凄いね。じゃあ、私の裁縫の課題もやってくれる?」


「何を作るの?」


「えーっと……スカート! 出来るでしょ?」


こんな会話をしていると、着替えに四苦八苦しているはずの桜子が襖から顔を出してきた。


「ちょっと姉さん! 蓉子に裁縫の課題頼むなら私のも頼んでおいてよ」


運動が出来る苗子、勉強が出来る桜子。共通点は家事が苦手なこと。


前者は煎茶を沸かそうとしてひじきを沸かしたり、海苔の佃煮と間違えて珈琲コーヒー豆の残りかすを家族分のお膳に盛り付けた。


後者は巾着袋を作れば雑巾になり、浴衣を縫えば袖を縫い縮める。


そんな困った姉たちは毎年のように家庭科の課題に苦しむ訳で、家事の得意な妹に泣きつくのだ。


「桜子姉さんは何を作るの?」


「何でも良いんだって! あんたの好きな物作っておいて」


「桜子、あんたは自分でやりなさいよ」


「姉さんこそ! 私は問題集と小論文が多いんだよ。あとクラブもあるし」


問題集、小論文、クラブ活動(部活動)は3姉妹の夏休みの半分近くを占めているが、それに構わず桜子は言い放った。


「そんなの、私だってそうだよ」


「私もそうだよ」


去年までは小学生で、言い返せなかった下の妹が反論したのは初めてのこと。それと同時に、父の怒号も飛んできた。


「お苗、桜! 出された課題は自分でやりなさい」


さすがの二人も、怒った父には逆らえない。続いて聞こえたのは、祖母の声。


「桜子ちゃん、上手く着られた?」


この祖母は、毎年縁日で櫓に登って踊っている踊り手の一人。


「はーい、着られました!」


「じゃあ、行こうか!」


そんな祖母を持っているためか、彼女たちは縁日が大好きだった。

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