奇妙な依頼 2
「断る。」
「…え?」
思わずユキも恩氏もかたまってしまった。声はリザの方からした。確かにリザから声が聞こえたのだ。
でも、リザが依頼のことについて口を出すなんて、まして断るなんてことはまず無いはずだ。
「その依頼、断る。SOUPはそんなにおいそれと潜り込める組織ではないし、そんな上層部にでもいかないと知りえないような情報を掴むのにはいくつ時間と命があっても足りない。」
リザが…あのリザが至極まっとうな意見を述べている。ユキは驚愕の表情でリザを見つめた。
恩氏も、まさか彼女の方から拒否の言葉が出ると思わなかったので、驚きを隠せない。
「そもそも、なんで、どこでイクスという男について知った?今回の依頼は不自然なところが多すぎる。」
確かに、一体誰を介してその男について知ったのだろう。
「SOUPの内部に潜らせていたやつからの情報だ。」
「なら、そいつに今言ったことを調べさせればいい。」
「無理だ。連絡がつかなくなった。」
「なら何故先にそのことを言わない?肝心なことを隠して有耶無耶なまま依頼されては困る。」
リザはいつになく饒舌だ。
しかも恩氏相手にも全く怯まず、ユキが聞きたかったことをいとも容易く聞き出してしまう。
「それは…申し訳ないことをした。確かに最低限の礼儀がなってなかった。」
恩氏はそれでも依頼を引こうとはしない。
「しかし、連中のやっていることは、やろうとしていることは知らねばならない。トラストルノの維持に関わる問題かもしれない。そしてこんなことを頼めるのは君ら2人の他にいない‼︎」
こんなにも必死になる恩氏を見たのは初めてだった。
ずいぶん能力をバカ高く買われたものだ。そりゃその辺の情報屋もどきよりは確実で信頼もある。だからといって…相手がSOUPとなると、部が悪い。
そもそも…
「1つ質問なんですが、そもそもこの依頼僕らに断る、という選択肢はあるんですか?」
SOUP内部にスパイ紛いの者を潜り込ませていることにしろ、SOUPに敵対心を持っていることにしろ、そうベラベラと喋ってしまっていいことなのか。依頼を受けずに引きさがれないようにされたのではないか。
「無論、断ってもらっても構わない。我々は追わない。」
我々は…ということは
「紅楼以外からは追われる可能性があるということですか?」
「それは、私にはなんとも言えない。」
恩氏は目を伏せてなにかを堪えるような、苦悶の表情になる。彼は根は優しい。だから本当はこんな姑息な手は使いたくなかったのだろう。
「分かりました。お受けします。
そのかわり、1つだけお願いがあります。」
どちらにしても待っているのはおそらく地獄だ。
リザとどこまでやれるか。
もう賭けだな。