噂の真実
結局…恩氏の息子さんへのアポも取れず、PEPEに関しては有力な情報を得るには至らなかった。
「まいったな…」
SOUPに関してもある程度の情報しか入ってこない。
リザからこの間の件も聞けないままでいる。
潜入は必ず成功させなければならないし、いや、成功させるが…不安の方が今は勝っている。あまりに状況が芳しくなく、困りどころだ。
「ねぇユキ、話が…ある。」
「ん?なに?」
明日の夕方頃にはSOUP内部に入らなくてはならない。こんな時にリザから話、とはなんだろう?
灯台下暗し。
「で、リザから話って?」
リビングのソファにリザは膝を抱えて座り、頭の上には何故かだらんとしたパンダのぬいぐるみを載せている。
「あの…あのね…」
リザにしては珍しく、瞳が揺れて不安がっているように見えた。
「うん、落ち着いて話してくれればいいよ。」
リザはゆっくりユキを見ると、意を決したように口を開いた。
「私、"名影零"って人、知ってるよ。本当はすごい知ってる。今日あの人達がなんで忙しそうだったかも…知ってる。」
「うん?え…?」
知ってる?なぜ?
「あのね…本当はこのことをあんまり言いたくなかったんだけど…でもユキには内緒よくない…のと、あとやっぱり今回は言わないとダメ…だと思うから……怒らないでほしい…」
「え‼︎いや怒りはしないよ。ただ話についていけるか不安なんだけど…」
むしろ言いたくないことなら、いくら相棒だとしても無理して言う必要はないとすら思ってる。だが今回は話が別だ。PEPEやSOUPに関しての情報が出来る限り欲しい。
「ま…まずね、これが首席の"名影零"だよ。」
リザが写真を裏返しで差し出してくる。